過ぎ去ったあの頃
 20101214



「みょうじ」



でかい太い声で脅すように呼び止められた。しまった、今日は風紀委員の…



「いい度胸だな。何度目だ?」

「さ…さあ…」



恐る恐る振り向けばそこにはやはり恐怖の風紀委員、真田先輩の姿があった。何回目だろう、私が捕まるのは。
先輩が気に入らないのは私の片耳についているピアス、だと思われる。いつも言われる前に逃げてるからわからない。
ほら、じりじりと今日も近づいてくる。幸村先輩が居なければ中学最強だかなんだか知らないけれど、こちとら中学陸上部最速の走者だから。



「みょうじ!」



やばい、来た!
真田先輩の怒鳴り声が私にとってのスタート合図。今日もまた始まった、と隣で柳生先輩はため息混じりに呟いた。



***



いつまでも続くわけない、そうだと知っていた。知っていたくせに、私は気づかない振りをして逃げ続けた。
ぱあん、とスタート合図が耳に届いた。あれから私は陸上部の部長になって、今こうしてトラックを走っている。緊張感に潰されかけながら走り続けることは、私にとって苦痛になり始めていた。
テニス部からは隣の席の赤也の指示が聞こえてきた。真田先輩の怒声が何だか、愛しくって仕方がない。
私の耳のピアスは3つ、右に2つと左に1つ。でも誰も怒らなかった。誰も、怒鳴らなかった。



「6.1」



ああ、最悪、タイム落ちた。



「うん」



後輩にタオルを手渡された。受け取って、号令をかけて、部活を終える。門には風紀委員が立っていた。
横目で見ながら歩いていくと、誰かが私に何かを言おうとしてやめた。
そうだ、もう真田先輩は居ないんだ。そう思えば、涙が溢れてきた。
高等部の前で立ち止まって、しゃがんでみる。高等部の先輩たちがちらちらと私を見ていった。
何だか無性に自分に腹がたった。私がこんなものをしていたのはどうしてだろう。お洒落のつもりだった?いや、走るのに邪魔なだけだ。なら、だったら、どうして。
答えは簡単。真田先輩との繋がりのような物だったからだ。だったらもう、こんなもの必要ない。
かちゃかちゃと音をたてて、私はピアスを外した。こんなもの捨ててしまえ。3つのピアスを手のひらで転がして、ぎゅうと握る。
振りかぶったとき、その手を誰かがつかんだ。



「みょうじなまえ、校則違反だ」

「…………さ、」



恐る恐る振り向けば、そこには何故か真田先輩の姿があった。



「真田先輩」

「まだつけていたのか」

「…今から捨てますけど」



真田先輩はわかるかわからないかくらいの笑みを口元に浮かべて、一言いい放った。



「いや、必要ない。似合っている」

「は?…だって、校則違反じゃ…」

「俺はもう風紀委員では無いからな」



今度は、分かった。真田先輩が確かに笑ったのが分かった。
そっか、もう逃げるのはやめか。






過ぎ去ったあの頃






***
うけるー意味不明笑
題名からして悲恋にもってくべきだったような。
まあ、いいや。真田好きだ。
しかし今回の三浦さん何キャラ?←
お粗末様でした(´・ω・`)





*園より
いやいやいや!ななななんて格好良い真田..!
真田、いい..!
というかなぎちゃんの文章が好きすぎて吹いた。
全私が泣いた。
真田さんかっこいいです..!