ぽつりと頬に触れた雨粒
二人で刻んだ相合傘
20101202
「…雨降ってきたね」
「ん?」
ぽつりと頬に触れた雨粒を手の甲で拭って、私は彼に笑いかけた。私につられてかどうかは分からないけど、彼も空を見上げて、「雨か」と呟く。
この時期の雨は冷たい。首もとから口まで隠すように巻き付けた学校指定のマフラーが、彼の首もとでも揺れる。
「傘、ある?」
「いや、なまえは?」
「……ごめんね、学校に置いてきちゃった」
「なまえの謝ることや無か」
そう微笑みながら仁王くんはぽんぽんと私の頭に触れた。髪の毛に阻まれて彼の温もりを感じられない。
「な?」と言いながら仁王くんが私の顔を覗き込むものだから、私は「うん!」と小学生か幼稚園児のように返事してしまった。
彼も同じことを思ったようで、くつくつと笑いながら歩き出す。
「……がきっぽいと思ったでしょ」
「いーや、思っとらんよ」
「嘘つかなくたって分かってるもん」
ぷい、と拗ねた振りをしてそっぽを向く。…まあ振りだと言うことは彼にはお見通しで、今だって小さく肩を揺らしながら私の頭を揺さぶる。
彼女なんだか、妹なんだか。
そうこうしているうちに雨脚は激しくなり、地面を黒く染め上げていた。
「仁王くん、雨宿りしよう」
「さすがに酷くなってきたの…」
私が雨宿りの場所を探してきょろきょろと周りを見回していると、不意に仁王くんが私の手をぎゅっと掴んで走り出した。
「わっ、どこいくの?」
「ヒミツ」
仁王くんのヒミツはよくあることだ。私には見破ることは到底出来ないから、もう黙ってついていくと決めている。
それにしても、手袋してこなければよかった。仁王くんと直接手を繋げたのにな。
仁王くんが屋根のある場所につく頃には、すっかり髪の毛も水浸しだった。
でも彼の連れてきてくれたここは、遠い昔に訪れたような場所で、懐かしさに胸がどくんと騒いだ。
「仁王くん…!ここ、」
「懐かしいじゃろ?」
「…っうん!こんなに、近かったっけ」
家から数分の場所だったのに、小さな時にはここまで来るのは宝探しの冒険のように思えた。
ふと蔦に覆われた壁を見れば、もう掠れて読めないけれど、確かに私の字で何かが書いてあった。
「……あ」
ああ、思い出した。小さな頃の淡い願い事。
「ん?」
仁王くんはテニスバックをどさっと乾いた地面に下ろし、タオルで頭を拭きながらこっちへ歩いてくる。
こんなもの見られたら、恥ずかしさで死ぬ…!
「あ、わ、何でもないー!」
仁王くんは少しきょとんと私を見つめると、にやりと口の端を持ち上げる。
ああだめだ、やっぱり私隠し事が下手すぎる。ましてや詐欺師仁王くんにはとてもじゃないけど敵わない。
「分かった分かった、そこどきんしゃい」
「や、やーだ」
「はいはい」
ひょい、と軽々しく彼は私を持ち上げて、蔦を掻き分けてしまった。
「…に、仁王くーん……?」
「くくっ、可愛え事するのう」
「……もう、やだー…!」
そこにあるのは私が昔書いた相合傘で、あろうことか雅くん、なまえ、だなんて書いてある。
今はもう掠れて私の名前しか読み取れない。しかし仁王くんは察してしまったみたいだ。
「…なまえ?」
「……んー?」
「続き、書いてもいーか?」
「え、うん。……続き?」
しばらくして、仁王くんは私を地面に下ろしてくれた。
下りて、仁王くんに話しかけようとした、その時に、唇に触れた何か。それが仁王くんの唇であると知るのにはあまり時間はかからなかった。
「……に、お…くん」
「なまえ、好きすぎて、駄目んなりそうじゃ」
「なにそれ」
仁王くんは恥ずかしそうに片手で頭を抱えながら、しゃがみこんで私を見た。耳まで真っ赤っかな彼は、詐欺師には似つかわしいほど人間味に溢れていた。
そういえば、続きって何だったんだろう。
「仁王くーん、あれ、みてもいい?」
「おお、ええよ」
私はきゅう、と仁王くんの手を掴んで、もう片方の手で蔦を退かす。
つたない字で書かれた「なまえ」の字の横に、仁王くんの整った「雅治」の文字。
ああ、なんだ、恥ずかしいことなんて無いじゃない。
「仁王くん、好きすぎて、私も、仁王くんしか見れないかも」
仁王くんはくしゃりと笑った。
「俺だけ見とって」
二人で刻んだ相合傘
***
こんなに甘いのは初めて書いたよ私(^0^)
そうか、甘いってこう言うことか。
沙ちゃんのももうちょっと待ってねちゃんとUpします!
仁王くんらーーぶ!
*園より
うひいいなんてイケメン仁王くん(^p^)(^p^)
私、彼中々口調とか難しくてかっこよくかけないので、本当尊敬します..!
梛ちゃんの仁王くんは本当にかっこいい!
はあはあです。
うへへへ。
私もがっつり更新したいです頑張ります!