夢を叫んで



私には憧れの先輩が居る。……もとい、憧れの先輩が居た。
彼はいつでも沈着冷静、クールそうに見えて優しいまさに理想の先輩、のはずだった。
だけれど、 何だろうここ、何で私こんなところに居るんだろう。



「…さあ、叫べみょうじ」

「やだっ」

「……何だと?」

「あああごめんなさいすみません!」



あれ、謝っちゃったよ私。おっかしいなあ、私間違ってないのに。
そう、間違えたのはあれだ、昨日の私。
友達と柳先輩って恰好良いよねー、みたいな話をしていて、ええとそれで、なまえの将来のゆめは?って聞かれて…。
ああそうだ、私は冗談のつもりで「柳先輩の彼女!笑」とかって答えたんだった。
そして皆で笑って、私の正面に座っていたなっちゃんの表情が固まって…。
皆で振り向いてみれば、そこにはなんと柳先輩が。
馬鹿か。馬鹿だったのか私。
それでいてもたっても居られなくなり、柳先輩の腕を引いて、屋上にやって来て必死の弁解。
柳先輩は困ったように笑った はず。



『ああ、事情は分かった。だが、明日放課後に此処に来てもらおう。いいか?』

『あ、ハイ、勿論です』



もっともあの時の私は柳先輩の本性を知らないわけであって、と言うか柳先輩に憧れていたのだから拒否する筈もない。
……で、今に至る。
ちょっと理解したような口を聞いたけれど、本当のところ理解なんて1%もしていない。
だっておかしいでしょ!皆の憧れ柳先輩が私の後頭部を鷲掴みにしながらにやりと笑うなんて。
嘘、嘘嘘嘘!こんなの柳先輩じゃないいい!
だれか嘘だと言って、教えておじいさん!
高所恐怖症な私だけど、この状況を考えればあの今にも契れそうなでっかいアルプスのブランコに乗ったほうがましだ。



「あああ!柳先輩!」

「なんだ?」

「怖い怖い怖い!」

「何がだ?グラウンドとの距離か?俺か?」

「いやあの柳せんぱ……うああ嘘ですこの高さです!」

「そうか、じゃあ此処からテニスコートに向かって叫べ、将来の夢を」

「そ れだけはあああ!」

「どうした?落ちるか?」



ああもう神様助けて下さい!
確かにそうだった、顔のいい人が性格まで良いとは限らないよね。
それにしてもこの豹変っぷり半端じゃない…って言うより殺される!
常ー勝ー立海大!常ー勝ー立海大!
誇らしき我が校のテニス部は今日も元気に活動中。あなたも活動しろよううう!



「さあどうする。言うか死ぬか」



ええええ死ぬんですか!
そ、そりゃあこの状況じゃ言うしか無いんですけども、と言うより貴方はテニス部の人たちにこんなこと知られて恥ずかしくないのか。
よ、よっしゃ言うぞー言うぞー 名誉も意地も捨てろ、みょうじなまえ。命のためだ。



「…し、将来の夢は…柳先輩のお嫁さんになることです!」



勇気を振り絞って大声。喉が潰れたかも。いい加減話してもらえませんかね、柳先輩?
急に軽くなった後頭部。やばい多分腫れてる。何という馬鹿力だ立海の参謀。
ぱっと振り向けば、柳先輩がにやりとその黙っていれば端正な顔を歪めて笑っていた。



「……あの、言いましたけど」

「知らないうちにお嫁さんになっていたとはな」

「……あああ!」



夢を叫んで



後日言うまでもなく噂の中心でした。






***
スライディング土下座アアアアアア!
いっやまさか自分でも企画でこんな笑えないギャグまっしぐらやると思いませんでした。
えへへ、柳先輩好きの皆さんに永遠の謝罪をします。
私も柳先輩好きです。






*園より
梛ちゃんで、「夢を叫んで」柳夢でした!
いやいやいや、Sっ気な柳にニヤニヤが止まらなかったです。
叫べ、とか命令口調なのとか、落ちるか?とか とにかくなんて素敵な柳なの(^p^)←変態
ギャグ調なのもテンポ良くて素敵な小説でした!
やっぱり梛ちゃんといえば柳ですよね!笑
あああ私も更新せねば..!