無音。


この部屋に響くのは、自分が動く音だけで。

共働きの両親は今日も帰って来ない。どうせまた夜勤になったのだろう。

学校の課題も済ませてしまった。後はもう寝るだけだ。

(でもまだ八時なんだよね…)

暇だ。中途半端に時間が余ると何をしたらいいのか分からない。

(……………)

なまえは携帯のアドレス帳を開いた。…暇だから誰か一緒に話してくれないかな。期待を込めて画面をスクロールする。

(…あ。彼でいいじゃない)

メール画面を開き、簡素な文章を打つ。

『桃城君、今って暇? もし良かったら、付き合ってほしいんだけど…』

送信。


返事はわりと早かった。

『おーいいぜ。なあ、英語の宿題終わったか?』
『うん、勿論。もしかしてまだ終わってないの?』
『頼む! 明日学校で見せてくれねえか? カツサンド奢るからっ』
『私、そこまで食べれないんだけどな』

メール越しでも伝わってくる彼の表情に、なまえもつい、つられて笑みを漏らした。





他愛もないやりとりを、いくつ繰り返しただろうか。気がつけば夜はすっかり更けて、普段ならうつらうつらしてベッドに入る時間。

なるべく早く切り上げようと、眠い目をこすって文面を打つ。

『ごめん、こんな時間まで付き合わせちゃって。明日も部活の朝練あるんだよね?』
『いいっていいって。退屈しのぎにもなったみてーだし、そろそろ寝るか?』

………………。

『うん。また明日、学校でね。おやすみ』
『じゃーな』

彼からの最後のメールに目を通して、携帯をパタンと閉じる。やはりその音は室内に反響して空しい。

「あーあ…」

予想外のことにため息が漏れるのはどうしようもなくて。中天にかかった月を見上げ、ぽつりと呟く。

「なんでだろうなぁ…」



…気づかれていた。自分が、独りきりで、退屈で、寂しくて、言いようもない孤独に不安を抱いてたこと。


メール越しでも伝わった。きらきらの、優しさ。あったかい、笑顔。


「…よし」

なまえは電気を消して布団に潜り込んだ。この夜が明けて、朝日が昇ったら、元気な笑顔で彼に話しかける為に。







確かに感じた君の温もり。

明日は無機質な媒体などなしに、直接触れてみたいから。





〈挨拶〉
桃は敏い人だと思う。クセモノだから。
…という私の勝手な妄想で書き上げてしまった話でした。
似非桃ちゃんすみません!

私の四つ目!





2010.11.20




**
園より

桃先輩..!
分かります彼って何気なく気をつかって、元気にしてくれそうだなあ。
沙ちゃんの桃先輩がかっこよくてはあはあです(^p^)
私の亀更新ぶりをどうにかせな..!