「…じゃあ、ギャリーさん、は美術館にいたことしか覚えて無いんですか?」

「…ええ…」


もう目を覚ましたのだからそのままどけてはいさよならと出来たらよかったのだがさすがに記憶がないと言っている人に対してそんなことは出来ず、とりあえず身元確認をしようと思い、名前や年齢等を聞いてみたところ、名前はギャリーといって、年は23らしい。髪の毛も地毛であり、どうやら日本人ではないようです。あとはここに来た経緯を思いだしてくれれば良いんだけどなぁ。「うーん」と腕を組んで美術館でのことを思い返すように宙を見上げるギャリーさんをとりあえず黙って見守ることにした。



「でも…何か…」

「?何か?」

「…暗いところにいたような…」

「え」



事件の匂いがするような発言はやめてください。誘拐監禁系?誘拐監禁系なの?でもこんな男の人誘拐監禁して私の家の前に放置するような事件って一体何なの誰得なの。どうか寝ぼけて夜道歩いて来ちゃった系の可愛い事件にしておいてください。だから、だからねぇねぇ「…」どうか真剣な顔で黙り込まないでください勘弁してください。これ以上は警察のお仕事ではないでしょうか。携帯でピポパして良いでしょうか。「バラ…」「え?」バラ?

ふとギャリーさんの視線の先を見ると私の服のポケットから出ていた青い薔薇のストラップがあった。薔薇がどうかしたのかな。これで何か思いだせるならと近くで見せるべく薔薇に手をかけたところでギャリーさんの眉間に更に皺が寄っていることに気づく。



「…」

「ギャリー…さん…?」

「…」

「あの…」

「…っ…」

「え、ちょ、まっ!どうしたんですか!」



どんどん険しい顔になっていくギャリーさんに焦って声をかけたが、既に遅かったのか何なのかいきなりぐらりと床に倒れそうになったので慌てて体を支えてあげた。そのまま起き上がる気配はない。「ギャリーさん?ギャリーさん大丈夫ですか?ギャリーさん?」何度も呼びかけてみるが返事はなくて、え、うそどうしよう。そんないきなり。救急車?でも身元もよくわからない人だしどうみてもパスポートの類も持ってなさそう。かといって放っておくわけにも…!ぐるぐるぐるぐる考えるが何が最善なのかさっぱり分からない。でも覗きこんだギャリーさんの顔はとても青白く、て、



「………っっ」



ええいもう考えたって仕方ない!どうにでもなれ!!
後のことなんか考えていられるか。勢いよく踏ん張ってギャリーさんの腕を肩にかけて立ち上がった。








(ぐ…重たい!家の鍵どこしまったっけ…!)
(家で死んだら許しませんからね!!くっそー!)


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