私より先に目が覚めたらしいギャリーさんは、とても申し訳なさ気な顔をしていた。
そして部屋の前にいた事、いきなり倒れた事、運ばせてしまった事、ベッドを占領していた事などなど次々に謝って、最後に、本当にごめんなさいありがとうとこれまた申し訳なさ気な顔で頭を下げた。




「あの…いいですよ私が勝手にやったことだし…元気になったならよかった」

「でも」

「記憶は戻りました?」

「え……ああ…えーと…」



急に口ごもり、視線を落とすギャリーさん。まだ思い出せていないのだろうか。それとも言い難いことだったりするんだろうか。…うーん。



「……とりあえず朝ごはんでも食べましょうか」

「え?」



あげられた顔はとても間の抜けた表情だった。

















「手伝うわよ…!」

「えーいいですからいいですからパン焼いてコーヒー入れるだけだし」

「これ以上迷惑かけるなんて」

「とかいってる間にはいできましたー残念でしたー」

「………!!」



悔しそうに両手で顔を覆うギャリーさんを尻目にパンとコーヒーをテーブルへと運んで席へつく。ほら早く席ついて冷めちゃいますよと急かせばちょっと拗ねたような顔をしながらも大人しく席へとついてありがとうと返してきた。なんだろうこの人見た目に反して可愛い人だなぁ。人間見た目ではないな。偏見いくない!もぐもぐとパンを咀嚼しつつ何話そうかななんて考えていたら、先にギャリーさんが口を開いた。「名前」はい何ですか。



「…なんとなく、思いだしたんだけど」

「!」

「美術館での話」

「はい」

「……………」

「………言い難い事だったら良いですよ…?別に話さないからって警察に突き出そうとか考えてないし…」

「いえ、そうじゃなくて…ただ…ちょっと信じられないような話だから」

「信じられないような」



家の前にいきなり記憶をなくした外国人風のオネェが倒れていたんですという展開以上の信じられない話があるのだろうか。正直昨日の話を誰かにしたとしてもきっと信じてもらえないと私は思う。私だったら何言ってるんだろうこの人大丈夫かと心配になるだろう。…まぁ何にせよここまできたら何でもバッチ来いやという気持ちでいっぱいなのでどうぞどうぞ話してくださいとしか言いようがない。手に持っていたパンをお皿に戻し、続きを促した。さぁバッチ来いや。




「アタシ、絵の中にいたのよ」




何言ってるんだろうこの人大丈夫か






(そして最初から順を追って話された話に私はついていくだけで精一杯だった)



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