「はぁー…」



とりあえずコートを脱がせてからベッドに寝かせベルトを緩めて布団をかける、そこでやっと一息をついた。ただ連れて入って脱がせて寝かせるだけだったのだが(何故だろう言葉にすると変態的)相手は成人男性なため女の子には相当辛かったわけです。あー肩も腰も痛い痛い。水とか飲ませた方がいいのかもしれないけど意識のない人に水ぐいぐい口へ入れてもいいものかと悩んだ結果一応いつでも飲ませられるように水の入ったペットボトルを枕元に置いておくことにした。顔色も倒れた時にくらべるとちょっとましになったようにみえるし、脈も落ち着いてきてる。みていなくても大丈夫だろうか。



「よし」



それじゃあ当初の予定通りお風呂に入って寝ますか、といきたいところだがさすがに知らない人、しかも男の人が家にいるというのにのんびりお風呂に入ってなどいられない。かるくシャワーを浴びることすらちょっと憚られる。さっき話をした限りでは変な人ではないと思うんだけど…一応。それにまたいきなりこの人の身に何かあったらたまったもんじゃないので。どうせ明日は休みなんだし、朝まで我慢しようかな…とりあえずメイクは落として部屋着に着がえておこう。



…それにしても今日は本当に疲れた。



朝から散々だった一日がまさかこんな終わり方をするとは。とりあえずもう一度ギャリーさんの脈をはかって大丈夫そうだったら私はソファででも寝ようと少しだけ布団をめくって手をとった。

とくん とくん とくん

規則正しく伝わる波…ああ、もう落ち着いている。「…よかったー…」酷くなったらどうしようかと思った。まだ少しだけ眉間に皺は寄っているものの顔色も大分良い。これは安心してもよさそうだ。



「さてさて私も寝ます…か……?」



あとは明日考えよう!と脈をはかっていた手を、元の場所に返そうとしたところで「…え」また事件がおこった。終わりじゃなかった。最後の最後まで油断をしてはいけなかった。そうです日付が変わるまでが一日です。…この、右手の、違和感。まさかまさかまさか。おそるおそる手元をみると、あろうことか私の右手はギャリーさんの手にぎゅっと握られていて(何で?)思わずそのまま固まった。「……」おそらく手首を支えると共に掌に片手を添えたのが悪かったごめんなさい。つい握ってしまったのだろう。子供か!と心の中で突っ込みつつやんわり手を抜こうとしたのだが。ぎゅ。「…え、ええー…」…ど、どうしよう…!!!ちょっとこれどうしよう…!!!逆にぎゅうと握られてしまっていたたた痛いんですけどうそだちょっと待って!!



「うー…とれない…ぐっ…」

「…ん……」

「!!」



お、起きた、かな、覗きこんでみるが起きたような気配はなく、すーすーと寝息が。「……あれ…?」起きた気配は確かにないがギャリーさん、なんだか安らかな寝顔になっている気がする。
さっきまでまだちょっと苦しげな顔をしてたと思ったんだけど、はて、と首を傾げていたらぎゅ、とまた握る手に力が入れられた。



「……」



…手。手?まさかなぁと思いながらもなんとなくやんわりと私も重なっている手に力をこめてみれば、ほんの少しだけギャリーさんの表情が和らいだ、ような。ああ、そうか。だから。
重なる手とギャリーさんの顔を交互にみてから最後に一つ大きなため息をついた。



「仕方ないかぁ…」



ソファで寝るのは諦めるしかないみたいだ。






(明日は良い日になりますように)



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