「名前足大丈夫ー?」

「大丈夫…ごめんね音也重くない?重い?重いよねごめん本当ごめんね」

「重い」

「ああああやっぱりいいいいうわあああ死んで詫びるうわああああ」

「えっちょ、名前!今の俺じゃないよ!!トキヤだよ!!」

「トキヤァァァァァァ」

「わわわ暴れないで落ちちゃう落ちちゃう!」

「ぐっ…」

「ったく…だらだら走ってるから捻るんだよ…」

「だって翔…私はマラソンが嫌い…」



だらだら走りたくもなるというかだらだら走るしかないじゃないか体力無いんだから。
短距離なら得意なんだけどな…文句言ってもしょうがないからせめて楽しいことでも考えようとそっちに集中してたら思い切りぐねったけど。声にならない叫びと共に膝から地に崩れ落ちちゃったわ。劇的だったわ。



「まさかその現場を音也に目撃されていてさらに保健室までおんぶで運んでもらうことになるとは…」

「一十木だけではなく皆見ていたがな」

「そこは見て見ぬふりするのが男なんだよ真斗君あの悶えてる中皆が走りよってきた時の私の気持ちを5字で答えよ」

「うれしいな」

「は!ず!か!し!い!だろうが!大体トキヤに聞いてない!」

「ぼーっと走っているのがいけないんですよ。どうせくだらないことでも考えていたのでしょう」

「失礼な…!私はいつだって音也のことしか考えて無い」

「はぁ…くだらない」

「音也トキヤ殴るからちょっと寄ってもらっていいですか」

「もーだめだってばー」

「はい」

「物分りよすぎだろ」



私は音也の言う事なら何でも聞く。



「名前は早く足治さないとねー」

「音也がおんぶしてくれたからきっとすぐ治る…」

「えー本当?」

「音也良い匂いするからすぐ治る…」

「え!うわ髪に顔埋めないで!さっきまで走ってたんだから汗臭いって!」

「音也の汗はフローラル」

「え、えー!ちょ、くすぐったいって!」

「俺こんなに人にドン引いたの初めてかもしれねぇ…」

「翔いいんですよ殴っても」



外野がうるさくて爆発してほしいけど(大体何で皆付いて来るんだよかるがもか!殴ってもよくないよ!)くすぐったがる音也が可愛いから全てを許そうとおもいます。



「足はやく治さないとどこにも行けないもんなー」

「そうだねー部屋に引きこもり生活は嫌だなぁ…転がってでも外出たい」

「じっとしてなきゃだめだって!俺が行くから部屋で遊ぼう」

「お、音也…」

「移動する時はこうやっておぶってあげるからさ、足は使ったらだめだよ」

「…音也なんでそんなに優しいの…天使なの…某一ノ瀬なんてすぐ殴るのに…」

「殴りますよ」

「一言目から!」

「トキヤ駄目だよ女の子殴ったら」

「音也…!」

「わわわ!もーしがみついたら駄目だってばー!」



ぐりぐりと音也の肩に顔を擦り付ければ擽ったそうに身を捩る。この幸せが移動時間の間ずっと続くのかと思うと私は私は。



「朝も起きる頃にちゃんと部屋へ行くし」

「!」

「夜は寝るまでずっと傍にいるからね」



だから安心してと微笑む音也。翔がいやいやいやお前それはねーよとげんなりとした顔をしてつっこみをいれてもえーそうかなぁと首を傾げている。お、音也…何それ天国なの音也天国なの…!いやでもそんなに音也に迷惑をかけるわけには…早起き苦手だし…ぐぬぬ…



「だって俺のいないところで無理してさらに痛めたら大変だろ」

「…!」



真剣な声色でそう口にすると、ぐ、と私の足を支えている両手に力が入れられた。聞きましたか奥さん。表情が見えないのが口惜しいけれどこれは私をときめかせるには十分すぎるほどだ。思わず肩に顔を埋めてしまった。「?どうしたの?痛む?」違うよ音也!

にやけを抑えつつ深呼吸をして顔を上げるがじわじわと押し寄せるこの衝動はどうも抑えられそうにない。先ほどの音也の発言でか頬を引きつらせている翔とその肩へトキヤが手を置いたのが視界に入ったが今はそんなことどうでもいい。「音也!」「なに−?」少しだけ顔をこちらへ向けた音也の頬に唇を押し付けた。小さな驚きの声と共に頬がほんのりと桃色に染まるそれが私をさらに駆立てる。音也音也音也!私は!そんな!優しい!貴方が!




「大好き!」

「うん!俺も大好き!」







(お、お前等!!敷地内といえど外だぞ!!はしたない!)
(聖川さんそういう問題ではありませんよ…)
(お前等もう勝手にしろよ)





(2013.11.17)
和音さんへ
企画ご参加有難う御座います。
イチャラブ出来ているか不安ですが…!とても楽しく書かせていただきました。
素敵なリクエスト有難う御座いました!
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