「…」

「…」

「貴女今何時だと思ってるんですか」

「…」

「24時です。もう日付が変わりました」

「…」

「こんな時間に私に一体何の用ですか」

「寝れぬ」

「…」



武士ですか



「珍しく真面目な顔で何を言うかと思えば…寝てください」

「寝れぬ」

「寝てください」

「寝れぬ」

「…」

「寝れn「十分に分かりましたもういいです布団に戻ってください」

「…ちょ、お、押し戻さないで…!助けてよトキヤ私目ギンギンなんだけど見てこれ目見て超血走ってない?」

「いえ、ちょ、み、見せなくていいです近い!やめなさい!」

「いたい!叩いた!」

「正当防衛です」

「何からの防衛だよ!目から何が出るっていうんだよ!涙しかでないよ!くそう…かわいい相棒がこんなに助けを求めているというのに…」

「カワイイアイボウ早く自分の布団へ帰ってください」

「お邪魔しまぁす」

「なっ待ちなさい!!」




丁寧なお辞儀と同時にするりと軟体動物のごとく部屋へ入ってきた名前(何ですかこの動き!)に遅れをとってしまい掴もうとした手もするりとかわされ空をきった。
こういうスキルだけいつも高いのはどういうことだ。一体どこで磨いたのかまったくいらないスキルばかり身に付けて。




「せっかくトキヤが泊まりに来てくれているのでもっとお話したいなって…」

「…………………………上目遣いで言ったって駄目です」

「(間があった…)お話しようよ…!」

「話なら起きてからできるでしょう…寝なさい」

「…」

「何ですその目は」

「家の鍵が無くて絶望しているところを助けてあげたのは誰だろう…」

「!」

「音也も嶺ちゃんも仕事で朝まで帰れなくなったし他の皆も不在で…」

「…」

「本当ならトキヤは今頃寒空の下…」

「…」

「温かい夕飯温かいお風呂温かい寝床…」

「…」

「…」

「…少しだけですよ」

「やったー!!!さすがトキヤ!!!」

「言っておきますけど鍵を忘れたわけではありません音也の馬鹿が間違えて二つ持って行ったんです」

「はいはい」

「はいは一回です!」

「トキヤお母さんみたい」

「産んだ覚えはありません」

「そんな覚えあったら嫌だよ!」

「……それで、話といっても何を?」

「うーんうーん」

「…」

「…思いつかないね!」

「おやすみなさい」

「あああああああ」




ばさりと布団を被って名前とは逆方向を向く。構ってもらえないと分かれば大人しく帰るでしょう。泊めてもらった借りは後日適当にかえしますよ。「トキヤー」無視無視。ここは甘やかすわけにはいかない。この状況甘やかしたらどうなることか。「トキヤトキヤー」目を閉じていれば自然と眠気は来るはず「トーキーヤー」こうしていればだんだんと…だんだんと意識がフェード…アウト…「トキヤおらぁっ」「ぐっ」




「…」

「…っ…何を…して…いるんですか…!」

「のしかかり」

「どいてください」

「しりとりを…しませんか…」

「しません」

「りんご」

「五線」

「んんんん!!」

「おめでとうございますおやすみなさい」

「別の意味で涙の勝利だよくそう!!あ、お話!お話のネタ思いついた!ベタベタに好きな人ってどうですか!」

「…」

「一ノ瀬君の好きな人は誰かなぁ」

「…」

「いーちのーせくーん」

「…」

「一ノ瀬くーん!一ノ瀬くーん?いち………トキヤ?トキヤえっしんだ?しんだの?」

「…口を…接着剤でがっちがちにくっつけますよ…」

「(リアル!!)ごめんなさいごめんなさいちょっとした遊び心ですもう何も言わないです」

「まったく…」

「…黙ってるから眠気がくるまでここいてもいい?」

「…」

「だめ?寝るの絶対邪魔しないよーおとなしくしてるよー」

「今もう既に邪魔をしているのではないですか」

「ここはひとつ布団が一枚増えたと思って」

「………はぁ…」

「わたしは布団…わたしは布団…」

「…………仕方ないですね…」

「?」

「……上では風邪を引きます…布団に入りなさい」

「……っトキ…っトキヤァァァ」

「はいはい」

「トキヤァァァァァァ」

「分かりましたから」

「トォォキィィヤァァァァァっ痛!!」

「うるさい」

「私のパートナーは世界一すぐ殴る」

「貴女に対してのみならそう自負しています」

「でも優しいー!!」

「っぐ」




勢いよく布団にすべりこんで来た名前がこれまた勢いよくしがみついてきたので思わず息が詰まって変な声が出た。
パートナーを殺す気だろうか。




「トキヤは本当に優しいなぁ」

「目を瞑って大人しくしていてくださいね」

「はーい!んー…」

「…何故そんな力んで目を…いつもそんな風に寝てるんですか貴女…」

「ううん布団頭まで被ってたらいつの間にか寝てる」

「…」

「なんか凄くこう…守られてる感があって安心するからかな…」

「貴女は誰に命を狙われているんですか」

「トキヤになら狙われてもしょうがないかなとは思っている」

「命狙われるだけのことをしている自覚はあるんですね…その隣で寝ようとしていますが良いんですか」

「良いんです…今日のトキヤはハンターではなく…布団!」

「…そうですか」

「…」

「?何です?」

「いや、いつもだったら誰が布団ですかばかですか死んでくださいとか言うのになって」

「私を何だと思ってるんですかそこまでいいませんよばかですね」

「ばかは言うの…」

「大体、貴女に死なれてしまっては私の曲を作る人がいなくなります」

「あ、そうか」

「そうですよ。勝手に死なないで下さい」

「…」

「何ですか」

「…」

「…」

「…」

「…何ですかじろじろと気持ち悪い」

「きも…!?…いや、ううん、別に!何でも無いよ相棒」

「何でも無いなら早く寝ますよ相棒」

「はーい!」




口の端を思い切り吊り上げて返事をしてきた名前がそのまま私の胸に顔を押し付けた。「何をにやついているか知りませんがさっさと寝てくださいね」「むぐぁむぐぅ」「…」顔が塞がっているためか鳴き声のようなくぐもった声しか返ってこなかったがおそらくおやすみと言ったのだろう。おそらく。多分。もう何でもいい。やっと寝る気になってくれたようだしもうつっこむ気力もないのでこのまま寝てしまおう。長い戦いだった。



「もうすぐ26時…」



まったく…本当に…とんでもなく仕方の無い相棒ができてしまったものだ。
学生時代のことを思い出しつつ本日何度目かのため息をつきながら、胸元に未だ顔を埋める名前の髪に顔を寄せて静かに目を閉じた。




「…おやすみなさい」




結局のところこれがどこか心地好いと感じてしまっている私も、本当に仕方の無い














(すー…すー…)
(……………何ですこの拷問…)



結局一ノ瀬さん徹夜。








(2012.03.03)
千菓さんへ
企画ご参加有難う御座います^^!
トキヤ困らせるの大好きなのでとても楽しく書かせていただきました!しかし甘さほとんどなくてすみませんうおお…雰囲気が迷子ぉ…
素敵なリクエスト有難う御座いました!



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