「…現実逃避したい」


酒盛りするのは別に構わないけど人に迷惑をかけない範囲でしていただきたいのです。

目の前に広がる空いたお酒の瓶、瓶、瓶、瓶…と、寝転がってぐーぐー寝息をたてているジョセフ。幸せそうなお顔が憎らしい。そして何より今頭を抱えたいのは後ろからへばりついてきているもう一人の酔っ払いだ。


「シーザー重い」

「んー…」

「んーじゃなくてちょっと離れてよー」

「んー…」

「聞こえてる?ノックしてもしもーし」

「んー…」

「だめだこれ…もー離れてってばー」

「んー…ことわる」


断るな。いっそジョセフのように寝ていてくれたらよかったのに、この男、瓶を回収するべく屈んでいた私に背後からのしかかりをくらわせてきたのだ。さっさと離れて寝てしまわないだろうかと思いつつもなんとか瓶を回収する作業を続けるがやはり重い。無理。重い。そして何より耳元にかかるシーザーの熱い息がやばい。「…名前…」ぎぃやあああああ神様私が何をしたというのでしょうこれは無理やばい。「っ、ぐ」べちゃり。今までなんとか堪えていたというのについに力が抜けて重力のままに私は床へへばりついてしまった。シーザーを上にのっけたまま。重たい重たい重たい死ぬ。なんだかもういろんな意味で死んでしまう。


「…シ、シーザーちょっとどいて…」

「んん…」

「す、擦り寄らんとってぇ…!」

「すげぇ良い匂いする…名前…」

「しないしないしないから…!」

「あったけぇ…」

「熱いです…」


とほほだよ。すりすりと首筋に擦り寄りながら床と私の間に手を滑り入れて抱きしめてくる。暴れようにもシーザーの体重がかかっているため身動きがとれない。「…なぁ、こっち向いてくれよ…」「無茶言わないでよ」首折れるだろうがと思いながらもちょっとだけ横を向くとシーザーちゃんのドアップがあって小さな悲鳴をあげてしまった。

…しかしそれだけならまだよかった。やらなければよかったと後悔するが早いかその熱い唇が私のそれに押し付けられたのだ。絶叫物である。その上、押し付けられたなどという可愛いものでおさまらず、すかさずぬるりとさらに熱い舌が口内へと入りこんできた。


「っ…!?シ…ぁ」


私が身動き取れないのをいいことに歯列をなぞられ、口内の空気を奪い隅々まで舐められ、舌を絡めとられ、噛まれ、吸われ、いつもの優しいシーザーはどこへやら、やりたい放題の荒々しく激しいキスに二人の混ざり合った唾液が口の端から次から次へ垂れて行く。慣れないことに酸素を求めて喘ぐだけの私にはどうすることもできない。いつの間にやら私は仰向けにされていて、シーザーの手により、スカートは下着が見えるか見えないかというところまで裾がまくり上げられ、その太腿をゆっくりと感触を確かめるように撫で回されていた。(手付きがやらしーざー!)

「っはぁ…名前…んっ…名前…」やっと唇を離したかと思えばちゅっというかわいいリップ音を立てながら耳から首筋へとキスを落としていくシーザーはうわ言のように私の名前を読び続けている。偶に強く吸われてたまらず声が出てさらに顔へ熱が集まる。


「…シ、シー、ザー…」


一体どういうつもりだこの酔っ払いは。このままされるがままになっているとどうなってしまうかなど頭の弱い私にもよく分かるのだけれど如何せん力が入らない。そして何よりシーザーのことが好きであるが故に思いきり拒絶をすることができなくてどうしたらいいのかさっぱり分からない。これがどうでもいい奴であればやめやがれこの変態がとありったけの力を籠めて右ストレートを繰り出してしまうのだけれど。「名前…」名前を囁かれる度に理性が吹っ飛んでいってしまいそうだ。「…っ…これ…以上はさすがに…」だめだだめだと自分に言い聞かせていたら、鎖骨に歯をたてられてびくりと身体が跳ねた。ぼやぼやしている間に服の前は開けられて下着が露になっている。さらに布の上からでも分かる太腿に当たる感触に(これ、は、シシシシーザー、の、!)脳みそが沸騰しそうだ。だめだめだめやっぱりだめだこんなの「名前…っ…はぁ…」やめて呼ばないで誰か私の耳を塞いでこれ以上は勘弁してください「シーザーやめ…!」「…好きだ…」「だからやめ、は」「好きだ、名前…」「……」今、何て、口をあけて間の抜けた顔をして固まる私を捉えているのかいないのか、完全に自分の世界にいるシーザーは私の何も言えずに震える唇を舐め、甘く噛んだ。確かにこれは酔っ払った勢いではあるが、そこにシーザーの気持ちがあるのかもしれないということなのだろうか。そんな淡い期待が過ぎって、押しのけようとしていた手から力が抜けた。「…シーザー…っ…」唇が触れているか触れていないかという距離で、お互いの熱い吐息がかかる。ああ、もうだめかもしれない。「わ…わたし……」流されてしまおう、と、思った。確かに思った。どろどろに溶かされた思考回路は目の前の愛しいこの男のことしか考えていなかった。初めてはもっとロマンチックな雰囲気でなどと考えていたけれどシーザーが望むのなら、もう、このまま「うーんもう食えねぇよぉ」そうもう食べられ「はっ!!!!!」

私のものでもシーザーのものでもない声に肩が勢いよく跳ね上がる。現実が全力で体当たりしてきたような衝撃に目をかっ開き、そろりとその声のした方を向けば、先ほどと変わらぬ幸せそうな顔したジョセフがむにゃむにゃしており、夢の中で何を食べていたのかマヌケな発言はジョセフの寝言だったわけで、頭が急激に冷えて行く、やばい、この男がいた、さすがにこれは本気でやばい。気まずいというものではない死にたくなる。「…っ…」「…っぐぁ!!!」

完全に現実モードへと戻ってきた私は、なおも行為を続けようとする目の前の金髪に、心の底から謝りながら迷うことなく私は拳を振り下ろしたのだった。






(………頭痛ぇ…)
(ぎゃははシーザーちゃんてば飲みすぎと違うー?)
(うるさいそれはお前もだろうが!チッ…夢見は良かった気がするんだ、が…?何だこの瘤…)
(あー…)
(何だジョジョその顔は)
(…お、俺は何も知らねーよー酔っ払って名前を襲っちゃったことなんてなーんにも知らなーい)
(………)
(…真っ青だよシーザーちゃん)


途中でふと目が覚めてしまい悩んだ末に寝言で頑張りじょじょ


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