「ちょ、いやいやいや待った待った」
とりあえず落ち着けよと言ってはみても何一つ変わらないこの状況。私が部屋で本を読んでいたらいつの間に入ってきたのかDIOが私を後ろからがっちりとホールドしていた。いやしていたまでなら別に大体いつものことなので許せる。許したくないけどもうここは許しておこう。問題はそこからなのだから。あろうことかこの男私の肩をがぶがぶと甘噛みし始めたではありませんか。オーノー。
「ちょっとやめてくださいシャレにならないです」
「…何か文句でもあるのか」
「まだ一応命は惜しいです」
「ふん」
ふんて。ふんてお前。持っている本で殴ってやりたいところだけれどその後が怖いのでなんとか留めた。なおも続くDIOの甘噛みタイムにもういっそ一思いに噛めよこの性悪と思いつつなんとかして本に意識を戻すことにした。しかし牙が痛い。ぐいぐい裂けない程度に食い込んでくる。「……DIO服伸びる…」そのうち飽きるだろうと思っていたのに首周りをぐいぐい肩まで引っ張られ範囲をどんどんと広げていくこの吸血鬼。下着の肩紐噛み切られてるじゃねーですかばかやろう。
「服など無くても構わんだろう」
「構う構う私変態じゃない」
「欲しければいくらでも与えてやる」
「それは嬉しいけどでもそういう問題ではなく…」
「…ではどういう問題だ」
分からんな。びりびりがぶがぶ。止めるどころかどんどん進んで行く何様俺様DIO様。あれちょっと待ったやばいもしやこれは剥かれるフラグ、ハッと気づいた時にはもう時既にお寿司、間違えた遅し。上は既に服としての機能を失っているただの布になっていて、するりと滑り落ちそうになるのを慌てて抑えればにやりと肩口にある顔が笑った気がした。
「どうした」
「ど、どうしたもこうしたも」
「本はもういいのか」
「…両手が使えないので読めないです」
「離せばよかろう」
「…本当意地が悪い…っ…」
「ふん、耳が真っ赤だぞバカめ」
かぷり。耳を軽く噛まれて身体が揺れる。お腹に回されていた手はいつの間にか服の中に入り込み腹をゆるゆるといやらしく撫でていた。「…お腹空いてたんじゃないの」「誰が腹が減ったと言った」「…噛んでたし」「お前の血を頂こうなどとは思っていないさ」では何故噛んだ。言葉を返す代わりに太腿に置かれていた片方の手がすすすと中心へ向かって這う。ぎゃあ、ストップストップ。
「血は頂かない」
「う、うんうん」
「が、お前は頂こう」
「何それ変態か」
ひくりとひきつる口元はDIOには見えていない。見えていたところで愉快そうににやにや笑うだけだろうから別に良いけど。
「……噛むだけにしない?」
せめてそれだけにしない?DIOが満足するまで求められるより、歯型が沢山つくだけで済むならそっちの方がずっといい。(できればどっちも無い方がいいんだけど)「ふむ」「!」
「それは、貴様次第だな」
「…っ」噛まれていたところに今度はねっとりと舌が這わされる。私がどうあれもう決定事項じゃないですかという突っ込みは言葉にならず、代わりに出るのは情けない声ばかりで泣きたくなった。