※翔ちゃんピアスデビュー時話









「あー!!!」

「うお!なっ何だよ!!」

「ああああ…あああ……」

「ちょ、な、何…!」


朝、登校するための待ち合わせ場所。
俺を見るなり大声を出したかと思ったらよろよろとゾンビのごとく近寄ってきた名前に思わず後ずさった。怖ぇ!怖ぇよ!


「…痛い…!!」

「なっ!ど、どっか痛いのか?どうした?」


具合が悪かったのか…!だからこんな奇妙なことを!くそっ何で俺はそんなことも気づかずに避けようとし「翔が痛い!」えええええええ


まさに頭をぶん殴られたような衝撃。え、何て。何て言ったのこいつ。ぐわんぐわんする頭で名前が言った言葉を復唱する。痛い。翔が痛い。翔が。痛い。俺が痛い。あれおかしいな目の前が霞んできやがった。


「耳…」

「耳?」

「耳…穴あいた…」

「穴…?ああ、ピアスな、あけたんだけど」

「いたたたたた何身体に穴あけてんの!考えるだけで涙出る!」

「は?」


自分の耳を押さえて涙目になった名前で痛いの意味に気づいた。なるほど。そういうことか。ピアスホールあける肉体的な痛みってことな。何だよ心配して損したじゃねぇか俺の涙返せちくしょう。


「ドM」

「ちゃんとやれば痛くねぇよ」

「そこは本来穴がいらないからあいてないんだからね?知ってる?」

「ばかにしてんのか知ってるっつーの!」

「…」

「…何だよ」

「…ふさがれぇ……ふさがれぇ……」

「変な念を送るな!」


ピアスを初めて彼女にお披露目。正直かっこいいねとか似合ってるねとかさすが翔だねとか言ってくれるかなぁなんて期待とかしちゃったりしてたんだけどまさかの全否定。浮かれてた俺こそいたたたただよ!


「不良だよ翔ちゃん不良」

「翔ちゃんゆーな不良じゃありません」

「…痛い…」

「こっち見ながら痛いっていうのやめろ」

「ピアス」

「ん」


顔を歪ませながら俺の耳に近づいてピアスを凝視。そんなにか。そんなに嫌なのか。ていうか距離近いんだけどおいもっと離れてくれ頼むから!今名前の顔がこんなに嫌悪丸出しの顔じゃなかったらドキドキで壊れそうだろうなって思ったけど俺の心臓は正直なものでこんな雰囲気でもドキドキで壊れそうになってるんだがちょっと止まらない程度に鎮まっておけよ発作おきたらどうしてくれるんだよ耳見てるだけだ耳を!耳あつい!



「い、つまで見てんだよ」

「なれるまで見ておこうかと…」

「はぁ?」

「翔見るたびにうわぁって思いたくないから」

「俺もそれは嫌だ…」

「お互いのためだね」

「そんなに嫌ならふさぐけど」

「えっそれは嫌だ」

「えっそれも嫌なの」

「だってつけたいからあけたんでしょ!それに似合ってるもん翔」

「…そ、そっか…」

「照れ翔」

「やめろ!」

「しょうがないからピアスごと愛そう」

「ちょ、おま、そういうこというなよ」

「照れ照れ翔」

「お前…!」




最初のゾンビ登場から一転してにっこり笑顔。別人か。いや俺はたとえ名前がゾンビ化しようと愛を貫けるけどって違う違うそんなこと今関係ない何言ってんの俺大丈夫か。…朝からいろいろと大分傷ついた気もするけど結果なんとかいい感じにまとまったんじゃねぇのこれでいいんだろうか。




「ピアス今度一緒に見に行きたいな」

「…おう」




瞬時に俺の脳内はどこのお店に行こうかとかそんなんでいっぱいになったからこれでいいらしい。





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