「トキヤいる?」

「あートキヤ今どっか行っちゃったんだけどすぐ戻ってくると思うよ?待ってる?」

「どうしよう。入って良いの?」

「良いよ〜あ、でも俺今から翔とサッカー行く約束してるんだった…一緒に待ってようか?」

「えっいいよそんな行っておいでよ!私また後で来るよ!」

「部屋いていいよ!多分トキヤすぐ来ると思うし寛いでて!」

「えええいいのそれ」


ばたん。

ちょっとまって。私の制止も空しく笑顔のまま音也君はドアの外へ消えて行った。どんだけ軽いんだ音也君!簡単に部屋預けて出て行くなんてトキヤが知ったら小一時間正座で説教されるよ!
音也君の将来が心配だ…しかしそれより今だ。音也君を見送ったはいいけどさあどうしよう。



「まぁ…待たせてもらうか…」


せっかくだから。座って待つとしよう。
…でも他人の部屋ってどこに座ったらいいのか…普通に椅子に座るか床に座るか…
しかもここ男の子の部屋だしなぁ二人分の。それにしては片付いてるけど…多分トキヤが片付けてるんだろうな。
音也君も散らかすってほど散らかしはしないだろうけど…まぁそれはいいとしてとりあえず座るべきだ。よし。床にしよう。床。


「…」




……



座ったはいいけどトキヤもこないし携帯は部屋に忘れてきちゃったしすることがない。大体音也君はすぐ戻るって一体何を根拠に言ったんだろうか。音也君のことだから怪しすぎる。もう多少ごろごろしていてもいいんじゃないかな。いいよね。


ごろん。


んー。ごろごろ。静か過ぎてコチコチコチコチ時計の音がうるさい。音也君の音楽勝手につけたらだめかなぁ駄目だよなぁ…もういっそ寝てようかな。
ごろごろごろ。日の当たるところに転がって移動。あ、温かくて気持ち良い…寝れるこれ…寝れる…寝れ……………






























「………これは…どういう…」


部屋では音也がうるさくて本に集中できなかったので図書館に移動していたのだが、一区切りついてとりあえず部屋に戻ることにした。
そこまではいいのだが何故か部屋にいるのが音也ではなく名前にかわっていて。しかも床に転がっていたので一瞬何かあったのかと狼狽してしまったのだが近づいてみればすやすや気持ちよさそうに寝息をたてていたのでほっとした。しかしほっとしている場合ではない何故彼女がここに?大体いつからここにいるのだろうか。私が部屋を出てから三時間はたっているのですが…音也はいつ出て行ったのか。もしかしてずっとここで寝ていたのだろうか。

…いや今はそれよりも風邪を引かれては大変だ。こんな床でまったく…ベッドに寝転がられてもいろいろな意味で困りますが…内心ため息をつきつつもブランケットを出してかけてやった。



「……んー…」

「!」

「…トキヤー…?」

「…起こしてしまいましたか?」

「………あと…一時間…」

「それは少し長くないですか」

「…すー…」

「(本当に寝た!)」



恐らく寝ぼけていたのだろう。ため息をつきつつも思わず頬が緩んだ。しかしここに来たのが私だからよかったものの音也の方が先に帰ってきていたら一体どうなっていたか。さすがにあの男だって寝ている名前をどうこうすることはないでしょうが…名前の寝顔を見られてしまうのは少々…いや、非常に…許し難い。まるで子供のような嫉妬心に自嘲しながらも心の底からほっとしてしまったのだから仕方がない。



「…トキヤ…」

「はい…?」

「…すー…すー…」

「…寝言ですか」



一体どんな夢を見ているのやら。おそらくそこにも私がいるのでしょうね………子供じみていると思いながらも羨ましいと思わずにはいられない。はやく起きて現実の私にも構ってほしい。名前の頬を撫でてみるがふにゃりと笑うだけで全く起きる気配がない。…かわいいの…ですが…私が紳士でいられる内に起きてもらわなくては困ります。



「…仕方ありませんね…」



ぐい、と名前の身体を起こして自分の腕の中に収めた。少し唸り声をあげたもののやはりまだ起きない。昼寝で一体どれだけ深い眠りについているのかまったく…。きちんと夜に睡眠をとっていないのだろうか。

あまりにも起きないので揺すりおこそうかと思ったのだが、腕の中ですやすや眠る名前を見ていたらむくむくと悪戯心が芽生えてきてしまった。起きるまで好きにさせてもらうことにしよう。おでこ、瞼、頬と順に唇を落としてみる。身動ぎはするものの一向に瞼をあけないので次は耳、首へ。触れる度にぴくりと反応を示すので楽しくなってきてしまった。



「…名前…」



口付けだけでは物足りなくて耳へ舌を這わして名前も呼んでみる。なんだかとてもいけないことをしている気分になってきてしまったが止まるどころか少しずつ加速し始めてしまっていてどうしようもない。起きない彼女が悪いなどと自分勝手な言い分けをしながら唇を無防備な彼女のそれに重ねて舌を絡めた。味わうようにゆっくりと、名前が起きないのをいいことにだんだん激しく。漏れる彼女の吐息とくぐもった声…ああどうしたものか、止まれそうにない。

このまま押し倒してしまおうかなどという考えが頭を過ぎったところでようやく彼女の瞳が僅かに開いた。



「ん…ぁ…――!?トキ…!」



やっと起きた彼女の目が一瞬にして見開かれ、咄嗟に離れようともがいたがしっかりとホールド済みなので全く意味を成さなかった。私も離す気がないのでさらに彼女を求めて深く深く絡めて逃がさない。ばたばた暴れていた名前も逃げられないと悟ったのかだんだん大人しくなって震えながら私の上着をぎゅっと握り締めてされるがままだ。
そんなところも愛しくてさらに煽られてしまうああもうこのままここで、と考えた瞬間、ふと室内が暗いことに気づいてしまった。音也がそろそろ帰ってきてしまうのでは。…あの男が空気を読むとは考えにくい……不満いっぱいではあるがゆっくりと名残惜しげに解いて、最後に濡れた唇をぺろりと舐めた。それにすらぴくりと反応する名前にまた理性が飛びそうになるのをなんとか抑え込んで、必死に酸素を求める名前の息が整うのを待った。



「…は、ぁ…びっくり…した…」

「貴方がなかなか…起きないからです…」

「なにそれもー…寝ている人襲うとかないよ」

「いたずらのつもりだったのですが」

「いたずら!度が過ぎるわ!」

「ついついやりすぎてしまいましたね」

「ついつい…」



ため息をついて私にもたれかかる名前のおでこにもう一度唇を落とせば、また何するんだとでも言いたげに見上げてきたのでさらに唇に口付けた。



「またそういうことを…!」

「二人きりなのですから良いでしょう」

「そういう問題じゃなく!」

「それよりそろそろ音也が帰ってきてしまいますので移動しましょうか」

「移動?音也君ここに居て良いっていってくれたよ」

「貴方は一人部屋ですし大丈夫でしょうお邪魔します」

「大丈夫って何が。今日はトキヤに聞きたいことがあってきたのですが」

「ちゃんと聞いてあげますよ?後でね」

「後で?」

「ええ。先程の続きの後で、ね」

「…え」



耳元で囁く様に告げれば間の抜けた声を出して間の抜けた顔をした後にみるみると赤くなる顔。本当に良い反応をしてくれる…思わず笑ってしまったらトキヤ!と怒られてしまったが全く怖くないので微笑を返しそのまま移動するべく抱き上げた。途端に慌て出す名前。



「ちょ、ま、あの」

「では行きましょうか」

「トキヤさん…!」

「話は後で聞くと言っているでしょう」

「せめておろして」

「…そうですね…これでは早乙女さんに見つかった時困ります」

「だよね〜」

「体調悪そうにしていてください。体調の悪い名前を部屋に運んであげるということならば抱き上げていても問題はないでしょう」

「私は大問題だよ」

「言うとおりにしておいてくださいね。どのみち貴方は逃げられませんので」

「…笑顔こわい…」


かたかたと震える名前は体調が悪いように見えなくもないのでこれでよしとしましょう。見つからないことが一番ですが。とにかく今ははやく女子寮へ向かう方がいいでしょう。私の理性がもっているうちに。


逸る気持ちを抑えつつ女子寮への道を歩き出した。













(もう二度とトキヤの部屋で寝ない…)
(そうですね音也の部屋でもあるので少しは警戒心を持ってもらいたいものです)
((どの口が言うんだ))




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