「ああ、ハヤト君だめだよ髪の毛かわかさなくちゃ」

「んー眠いにゃぁ…」

「だめだよ風邪引いちゃう!ほら乾かしてあげるからこっちおいで?」

「んー…」

「よしよ―っうぁ!」

「ふふふー」

「ふふふじゃなくて…もー…滴が冷たいー」



ふらふらとこっちへ来たかと思ったらそのまま私へとダイブしてきたハヤト君を押しのけて座らせる。何でこんなに上機嫌なんだろうか。眠そうにふにゃふにゃした笑顔でおとなしくこっちを向いて正座。………いや。違う。後ろ向いてほしかったここは。



「私が後ろいけばいいか…ちゃんと座っててね」

「はーい」



ブオオ。スイッチを入れて風をハヤト君の髪にあててあげる。頭がふらついてくるのでちゃんと固定。櫛も忘れずに。トキヤに見られたら甘やかさないでくださいって言われるかもしれないなぁなんて思いながらしっかり念入りにブロー。アイドルなんだからいろいろ気をつけなくちゃ!



「ハヤト君寝たらだめだよーちゃんとお布団入るまで起きててね」

「んん…」

「…寝た?」

「…名前ちゃんの手…気持ちいいにゃぁ…」

「…」



覗き込んで見れば相変わらずふにゃりとした笑顔。寝てるのか寝てないのか…もう少しで夢へと旅立ちそうなそんなところだろう。



「まったくもう…あと少しだから我慢してね」

「わかってるよぉ…一緒に寝ようね…」



漸くふわふわのさらさらに戻ってきたハヤト君の髪の毛。もういいかなぁ。少しでも濡れてたら寝癖ついちゃうし傷むからなぁ。もう暫くやっておこう。

それからパチリとボタンを切って最後にもう一度櫛をいれてあげた。



「よし、終わりー」

「わーいありがとにゃ〜」

「じゃあドライヤー片付けてくるから先に布団入って寝てていいよ」

「えーついてく…一緒に寝よ?」

「ふふすぐそこなのに、じゃあ行こうか立てる?」

「任せなさーい」

「わ、うぐ」

「えへへ」



勢いよく立ち上がってきたハヤト君がそのまま勢いよく私にしがみつく。えええそれはいらないよ!何いきなり!と思っていたらハヤト君の手が私の髪の毛へと伸ばされ、ふわり梳くように指を滑らせた。



「…ハヤト君?」

「明日はボクが名前ちゃんの髪の毛乾かしてあげるね」

「あはは何かそれ変な光景」

「あー笑うなんて酷いにゃ!」

「ええごめんでもハヤト君自分の髪すら乾かしてるところ見たことないよ」

「それはだって名前ちゃんに乾かしてもらう方が気持ち良いんだもん!」



ふわふわと自分の刎ねた髪に触れてにこりと笑うハヤト君。そういってもらえると嬉しいけど、ちゃんと家で一人の時できているか不安になる。濡れたまま寝て朝髪の毛がひどいことになってトキヤに怒られてる姿が容易に想像できちゃうあたりが。こう。



「あ、今失礼なこと考えてない?」

「ななないよ全然!」

「怪しいにゃぁ〜明日はボクがばっっっちり乾かしてあげるからね!」



ぎゅっと私の髪の毛に擦り寄って笑う。頬に当たるハヤト君の髪が少しくすぐったい。
やわらかくてふわふわでさらさらで。とても羨ましい髪質だよハヤト君。ハヤト君に手を伸ばして私も梳く様に指を滑らせればハヤト君がもっととでもいいたげにさらに擦り寄ってきた。ふわふわ。さらさら。指通りが良いし気持ち良い。ずっと触っていたいなぁ。



「やっぱり名前ちゃんの指気持ち良いにゃ…」

「そうかな」

「うん。もっと触ってぇ…」

「はいはい」

「えへへ」



よしよし。ほとんど撫でてるのと一緒だけどハヤト君が嬉しそうだからいいかなんて思いながら指に髪を通しながら頭を優しく撫でて梳いてあげる。もう片方の手に未だドライヤーが握られているのはもうこの際いいや。後にしよう。




「…好きぃ」

「うん」


ハヤト君が幸せそうならもう何でもいいです。



「私も好きだよ」


















しかし暫くして寝息が耳元で聞こえ始めていろいろと後悔した。




(ハヤト君寝たらだめだってば…!)
(すー…すー…)
(ちょ、支えきれなくなるって…重い…!)
(むにゃ…名前ちゃぁん…)
(くそう可愛くて起こせない…!)


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