「…」

「…」


なんだかトキヤの元気がない。
元気がないというかなんだかそわそわしてるというか…ちらちらこっちを見てくるので気になってしょうがない。
私は音也がサッカーしにいってる間を使っていつも通りトキヤの部屋で雑誌を読みながらごろごろしているわけだけどこれでは全然本に集中できないじゃないか。
そしてなんだか気持ちが悪い!そわそわちらちらするトキヤ気持ち悪い!


「何か御用でしょうか…」

「!何、ですかいきなり」

「いや…いきなりっていうか我慢の末っていうか…」

「…」

「ちらちらしていらっしゃったので…」

「その距離を置いた敬語やめてください」

「どうしたの?私に何か言いたいことあるならちゃちゃっと言ってよ」

「…」

「やだなぁそんなに見つめられると恥ずかしい」

「…はぁ」

「ため息つかれた!」


わけがわからないよ!私が何をしたっていうんだ!ため息つきたいのは私の方だよ!
何が悲しくて彼氏にちら見され続けた挙句にため息つかれないといけないんだよ!


「貴方は…音也をどうお思いですか」

「は」

「……貴方は音也をどうお思いなんですか」

「は」

「……………貴方は!音也を!どう!お思いなんですか!」

「え、や、どうって言われても音也はいい子だよね」

「…」

「何か不満!?」

「では私はどうお思いですか」

「…ええ…何なのトキヤ…何なの…」

「正直に答えてください」

「トキヤー?…一応恋人だと思ってますけど…」

「一応」

「………がっつり恋人です…」


トキヤの眉間の皺が増えたのでちゃんと言いなおす。
やだもうこれ以上眉間に深い皺増やされたら何かメモでも挟むしかないんじゃないの。
いっぱい皺あるからいっぱい挟めるね!っていやいやそれはねーよ。
思わずセルフツッコミしちゃったくそう恥ずかしいトキヤのばかたれ。
いやいやそんなことどうでもいいそれよりも。



「何でいきなり音也なの?」

「…貴方が最近音也といるところをよく見かけるので…とても…楽しそうにして」

「あー…そういえば最近廊下でよく会うんだ音也と」

「…」

「音也といるとなんか元気もらえるからいいねー」

「…」

「え、ええーとトキヤといても元気沢山もらえるよ私!」

「別にいいですよ無理しなくても私はあのような明るさなど持ち合わせておりませんから」

「(めんどくさい!)」



結局眉間に皺を増やしてしまった!あああもうそうかそうかなるほどね!お餅焼いてたのかこの人は!確かに最近音也とのエンカウント率が高くてその度に盛り上がっちゃうからね!そこを見られてたとは思わなかった…!そうか…ジェラシーか…まぁそう言ってもどうせ違います勘違いしないでくださいってさらに眉間に皺増えるんだろうけど!どこまで増やすんだろうね!



「拗ねないでよトキヤー」

「拗ねてませんよ」

「トキヤといるの好きだよ私」

「…その割にはあまり楽しそうではありませんが」

「えーそうかな」

「ええそうです」

「…だってトキヤといると楽しいというか…うーん…」

「…」



音也達といるとそりゃ楽しい。楽しいし時間忘れて騒ぎまくれる。
トキヤといると騒ぐというよりこんなまったりした感じだったり、ぐだぐだした感じだったり、あと、その、こう、甘い感じだったりとかも、する、から楽しいというよりもっと別の何かだ。なんというかこう…こう…満たされてるような。そう。そんな感じだ。満たされてる私。あ、別に変な意味でなく!



「満たされる感じ!」

「満たされる?」

「他何もいらないなぁって思えるくらい」

「…」

「トキヤといると何も会話がなくてもそんな気持ちになるかな」

「…そう…です、か」

「うん」

「…」

「…」


そうですけど何だろうこれ。
トキヤの眉間の皺が消えたのはいいけど代わりに頬染めて僅かに口元が緩んでいる。
乙女か。今日のトキヤ女々しさが半端ないんだけどどうしたんだろう可愛いとか思っちゃったじゃないかどうしてくれる。私が彼女だぞ。しかし私も今トキヤの数倍は赤い自信はあるよ…!我ながらとても恥ずかしいことを口に出してしまったような!


「トキヤのばか」

「すみませんね」

「新しい羞恥プレイだよこれは」

「私も貴方といるととても幸せを感じますよ」

「そ、そうですか!よかった!」

「できるならもっと沢山触れ合っていたいのですが」

「や、だってここ音也の部屋でもあるからさあまりくっついたりしてるとさ」

「あの男はそこの机の上に鍵を忘れていっているのでどうせ入ってこれませんよ」

「…なんだって…」

「さあ、こちらへどうぞ?」

「…」

「私の腕の中では不服ですか?」

「いえ…よろしくおねがいします…」

「よろしい」



どうぞと広げられたトキヤの腕の中にぽすりと入り込めばすぐに優しくそれでいて力強く抱きしめられた。トキヤの腕の中は温かくて居心地が良いから困る。私もトキヤの背中に腕を回して負けじと強く抱きつけばトキヤがくすりと笑った気がした。顔は見えないけど。こんな幸せな気持ちになれるのはやっぱりほらトキヤだけじゃないか。



「トキヤトキヤ」

「何ですか?」

「好きー」

「…私も好きですよ」




ああやっぱり満たされてるなぁ。












(トキヤトキヤーごめん鍵忘れちゃってさーあれ?いないのかな?トキヤ開けてー!)
(音yむぐ)
(しー…)
(む、むぐ…)
(もう少し、このままで…)
(ぷは、で、でも音也が)
(翔の部屋にでも行くでしょう)
(え、ええでも…)
(今は私のことだけを考えていてください)
(…う、)
(返事は?)
(はい…(音也ごめん!))



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