の兄さんがこんなに愛いはずがない!
(ライニル/ニルライ)


・お互いブラコンなディランディ
・×というより+
・やんちゃな兄貴
・ちょっぴり肌色描写










「ライルー!朝だぞ、おい!ライル!」


トントンっと、控えめにされるノックとは真逆の遠慮のない大声。毎朝こんな起こされ方をされたら、無視したくもなる。
いつまで経っても起きない自分が悪いのはわかっているが、もう少し静かに起こしてくれてもいいだろうに。

返事をする気にもなれず布団の中で身じろぎをするライルは、ドアが開く音を聞いても起き上がろうとはしなかった。
そんなライルを知ってか知らずか、ライルの双子の兄であるニールはズカズカとベッドに近付いていく。


「ったく、早く起きねぇと、お兄さん悪戯しちまうぜ?」


無視を決め込むライルに、ニールが苛々し始めたことがわかる。
ベッドのスプリングが大きく軋んだのと同時に、膝にかかる圧力。

頭までスッポリと被っていた布団を勢い良く剥ぎ取られると、冷えた空気が服越しに伝わってくる。膝に跨がっているであろうニールは、ライルの体を楽しげにペシペシ叩いた。

(そんなことしなくて良いから普通に起こしてくれ!)

ひんやりとしたニールの手が、たまたまはだけていた腹に直接当たった。ビクッと震えた腹筋に気を良くしたのか、そのままパジャマのボタンが外されていく。
それでもライルは黙っていた。例え胸を、含んだ手つきで触られているとしても、だ。
脇腹から胸にかけてを行ったり来たりする指がくすぐったくて、思わず肩を竦める。もう片方の手で臍の周りをクルクル円を描くように撫でられ、寝たふりをしつつも体を捻った。


「ライルの肌、白いなぁ…」
(兄さんも同じくらい白いっての!)

「筋肉結構ついてるし……」
(頼むから筋に沿って指這わせるな!変態かアンタ!)


突然、本当に突然。
上半身を行ったり来たりしていた手がぴたりと止まり、すんなり体から離れていく。

(ようやく飽きてくれたか……)

はあ、とライルが息をついたのと、ニールが再びパジャマに手をかけたのはほぼ同時だった。






「だーーーっ!やめろ、やめろこの馬鹿!アンタ朝から何考えてんだ!」
「馬鹿って酷いな。ライルが俺を無視するのが悪いんだろ」


いくらライルでも、それだけは我慢できずに声を上げる。
その行動を予測していたかのように笑うニールは、慌てふためくライルを面白そうに見下ろしていた。


「だからってズボンにいきなり手ぇ突っ込むのはやめてくれ!」
「そんなに怒るなって。元気なのはみんな同じなんだからさ。それに、ズボン以外は良いのかよ?」
「良いわけないだろ!……というか、いい加減どいてくれない?」
「えーなんでだよー。もうちょっとこのままでも良いだろ」


ゆさゆさ腰を揺するニールを、ライルは少し冷めた目で見上げた。そろそろ眠気は消えてきたので苛々はしなかったが、いい加減に飽きてきたのは事実だ。正直、朝から疲れたくない。


「重い。それに兄さん、俺を起こすんじゃなかったのか。ほら、ちゃんと起きるからどいてくれ」
「起こすというか、構ってほしかったんだって。ライルが俺のこと"兄さん……"とか言って上目遣いで見てくれるなら」
「却下。そしてキモい。俺はそんなこと言う兄さんはいりません」


さあどいてくれ、そう言った瞬間。
ニールはライルの胸にパタンと倒れこんだ。また何か企んでいるんじゃないだろうな、と口元を引き攣らせるライルだったが、そういうわけではないらしい。


「ちょ、兄さん?」
「……いらないとか…言わないでくれよ…」


低く、独り言のように呟かれた言葉に、ライルは目をみはる。
ひどく悲しそうなニールの目が、冗談では済ませられないということを物語っていた。
さっきまで楽しそうに遊んでいたのに、今は迷子になった子供のような顔をしているに違いない。


「……悪かったよ。言い過ぎた。ごめん、兄さん」
「…良いよ、そんなに気にしてないし」


気にしてない様子には、とても見えなかった。胸元に寄せられたくせ毛を撫でると、甘えるように頭を擦り寄せてくる。
まったく、どっちが兄かなんてわかったもんじゃない。


「悪かったって。ホントにすまん。兄さんがいらないなんて思ってないよ」







「…じゃあライル……俺のこと、好き…?」



「……は?」
(ちょっと待て、いきなり何を……てか、なに動揺してんだよ俺!)


上目遣いで首を傾げる兄に、不覚にもドキッとさせられた。ちょっと……本当にちょっとだが胸が高鳴る。

落ち着け俺の心臓。そんなに早く血液を送らなくても俺は生きていける。
何故かニールを直視できなくて、ライルは思い切り目を背けた。


「ライル?どした?」

(違う、違うぞ!兄さんはこんな柄じゃないはずだ!そう、きっとこれは夢なんだ!だって……)

「俺はライル、好き……だぞ?」


(だって!)




の兄さんがこんなに愛いはずがない!





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