策士、策に溺れる
(ニル子アレ/ハロウィン企画)


!注意!

・アレルヤ幼児化
・ニールショタコン







「ニール!!とりっく・おあ・とりーとぉ!!」

バーン、と勢い良くドアを開けたアレルヤは、目的の人物を探すべく視線を走らせた。(それ程広くない部屋なので、ドアを開ければすぐに目に入るのだが)

アレルヤはベッドの上で膝を抱えるニールに駆け寄ると、後ろから思い切り抱き着いた。
さっき見た時には"くるんっ"としていた茶色い癖毛が、"もさっ"と見えるのは気のせいだろうか。


「おー……アレルヤは元気だなー…。可愛いぞー……」


振り向いたニールは何とも言えない微妙な顔をしていて、黒いオーラを背中にしょっていた。反対に、アレルヤはほんわかした、お花畑にいるかのような雰囲気と笑顔に包まれている。
アレルヤがぴょんぴょん跳ねると、ベッドのスプリングがキイキイ音を立てて軋んだ。アレルヤのリズムに合わせて、ニールの体も上下する。


「ニール、ニール!とりっく!とりっく・おあ・とりーと!」

「あー……トリックねぇ…。アレルヤになら、イタズラされても良いかなー…」


ニールは、もさもさした頭を掻きながらアレルヤを抱き上げる。大人しくニールの腕に抱かれたアレルヤは、きょとんとした表情でニールを見上げた。

腕に感じるもふもふした感触と子供特有の温かさ。それに舌足らずな英語。ああ、なんて可愛いんだ癒される…と目を細めるニールだが、反対にムクムクと巨大化する黒い感覚がニールの笑顔の下を蔓延っていく。

(ライルじゃないけど、なんか意地悪したい気分だ……)

彼は好きな子は虐めてしまう、そんなタイプの人間だ。多少の意地悪ならまだしも、ライルのそれは少々度が過ぎていることも、多々あるのも事実なわけで。
そんなライルですら可愛いもんだと思ってしまうのは、ニールの欲目かもしれないが。


「えっ、え?お菓子、お菓子は?」


「ん?お菓子はないかなー……だからホラ、イタズラしていいぜ?」


ニールは緩む頬を引き締めつつ、ズイッと顔をアレルヤに近づけた。
アレルヤの悪戯なんて、滅多に受けられるものじゃない。一体どんな可愛い悪戯をしてくれるのかと胸を高鳴らせつつ、ニールはその時を待った。
が、しかし。


「……っう、うぇ…」

「あ、アレルヤ!?」


アレルヤはプルプル震え出したかと思えばボロボロ涙を流し、小さな鼻をじゅるじゅる吸ってニールの胸に頭を寄せた。
自分の胸から聞こえた、ベチャッという小さな音にニールは一瞬固まる。目の前で泣くアレルヤを慌てて宥めようとするも、涙と鼻水が止まる様子は一行にない。

ベッドの脇に放置された何時の物かわからないタオルを取り上げると、自分の服で色々な汁を拭くアレルヤに手渡した。まさかこれが悪戯なわけないよな、と苦笑いして。


「うー…お゛菓子ー…うっひぐ……お菓子、ぼく、お、おか」

「あー……。アレルヤ、お菓子ならちゃんと用意してあるから。な?そう泣きなさんなって……」

「ほ、んと?お菓子……おかし…」


どうやらアレルヤは、悪戯するつもりなど毛頭なかったらしい。それに、悪戯を選ぶやつなどいないと思いもしないだろう。

(そりゃ、イタズラを選ぶなんて悪い大人がすることだわな)

申し訳ないことをした、と思いつつも、どんだけお菓子好きなんだ、と笑うニールは、あらかじめ買っておいたハロウィン用のお菓子袋を差し出した。


「ほら、お前さんチョコレート大好きだろ?ったく、食いしん坊なお姫様だぜ……」

「ニール、ありがとう…。お菓子、ふふふ……」

「よしよし、美味しいな?」


チョコレートを中心としたお菓子の群れに、アレルヤの涙は引っ込んだようだ。ニールの小さな意地悪は成功とは言えないが、アレルヤはやはり笑顔が可愛い。泣き顔よりも、ずっと可愛いのだ。


「アレルヤ……」

「なぁに?」

「Trick or Treat」


ふぇ?と目をパチパチさせているアレルヤに、ニールはニヤリと笑う。アレルヤの可愛い悪戯が受けられないならば、こっちがイタズラすればいいだけの話だ。
むしろそっちの方が燃えるな、と笑うニールとは逆に、アレルヤはあわあわと視線を散らす。

ニールの予想通り、アレルヤはお菓子を持っていないのだろう。優しいアレルヤの事だ。いくらお菓子を持っていなくても、ライルやハレルヤから貰ったお菓子をあげるはずがない。そう踏んだニールの考えは、間違っていなかったようだ。


「俺もお菓子食べたいなーと思って。アレルヤ、お菓子くれよ」

「あー…うー……」

「お菓子くれなきゃ、イタズラしちまうぞ?」

「ぼく、お菓子……うー…」


沢山のお菓子を貰った手前、お菓子がないとは言えないのだろう。うーんと頭を捻りつつも口を動かすアレルヤは、また一つ鼻を啜った。


「お菓子……お菓子……あっ!ニール、ぼくお菓子ある!!」

「え……」


そんなはずない。アレルヤはお菓子を持っていないはずだ。しかし甘いものが好きなアレルヤだ。ポケットに何個か飴玉を持っていても不思議じゃない。
結局イタズラは達成されないものなんだな、と肩を落とすのだが。



ちゅっ


(ん……?)

「えへへ、あまい?……ニール?大丈夫?」


(……甘い、甘すぎるぜアレルヤ)


微かに触れた唇からは、甘ったるいチョコレートの香り。しかしそれとは比べ物にならない程の甘さが、ニールの唇を始め全身に染み渡っていく。

頭がクラクラした。そう、例えるならリキュールを一気飲みした時のように。目の奥が熱くなって、ヒリヒリして、気管支が細くなって、息をするのが苦しくなる。


「アレルヤ……もっと欲しいな」

「ニール、もっと?」


ニールの言葉に首を傾げるように頷くアレルヤは、白い頬に手を置くとニールの口に何度も自分のそれを寄せた。
ちゅっちゅと繰り返される小さなうさぎの、お菓子なのか悪戯なのかわからない行為に、ニールがだらし無く頬を緩めていたのは言うまでもない。










策士、策に溺れる
(たまにはそれも悪くない)






(兄さん、あんたって奴は……!脳みそがチョコレート状なんじゃねーか!?)

(あれ程痛めつけてやったのに、まだ足りねぇかってか?あぁ!?)

(違っ…これはアレルヤから!!)





―――――

漸く完結(?)しました、ハロウィン企画。
大人しくニールだけにしておけば良かったものを……欲張ってライルさんとハレルヤを付けたのが間違いでした(^^;)
約1カ月、長い目で読んでくださり、ありがとうございます^^


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