魔法の呪文
(ライル+子アレルヤ/ほのぼの)

・アレルヤ幼児化
・ライル微ショタコン







「アレルヤー、今日はなんの日か知ってるかー?」


紅茶用のお湯を沸かしながら、ライルがアレルヤに問い掛ける。
冷蔵庫にオヤツあるから出してくれ、と言うライルの足元にピッタリとくっついているアレルヤは上目遣いで彼を見ると、ニッコリ笑って頷いた。太股あたりに感じていた小さな手の感覚が離れると同時に、パタパタと軽やかに遠ざかる足音。

低く唸る箱の中には、昨夜作っておいたパンプキンプリンが4つ入っているはずだ。


「今日はね、えっとねー」


わかんない、と笑うアレルヤは、冷蔵庫に身長が少々届かないため踏み台にする椅子を運んでいる。アレルヤが足から離れた僅かな間に、ライルは戸棚から大きな袋を取り出した。黒とオレンジを基調とした袋には、カボチャや可愛らしいお化けのイラストがちりばめられている。

だんだん近づいてくる小さな足音に、カラフルなそれを急いで背中に隠す。しかしアレルヤはそんなライルには目もくれず、運んだ椅子の上から冷蔵庫に手を伸ばしている。
内心焦るライルだが、幸いアレルヤは冷蔵庫の中身が気になってしかたないようだ。


「あ、のな、今日はハロウィンだ。んー……解りやすく言えば、子供がお菓子を貰える日だな。大人に会ったら、Trick or Treatって言うんだ」

「とりっく……?お菓子?」


聞き慣れない言葉に首を傾げるアレルヤだが、ライルの予測通りお菓子という言葉に銀の瞳が輝いた。
冷蔵庫に伸びていた手を引っ込めたかわりに椅子に腰掛けたアレルヤは、意味はわかっていないだろうが呪文のようにひたすらトリックトリックと唱えている。


「Trick or Treatお菓子をくれなきゃ、イタズラするぞって意味。イタズラ嫌だよな?」

「えっ……でも、そんな…ぼく…」


イタズラは迷惑をかける悪いこと。そう認識しているアレルヤは、イタズラの代わりにお菓子をねだるという行為に眉を下げた。お菓子を貰えるのは嬉しい。でも、なにかが引っ掛かる。
そんなアレルヤの心情を悟ったのか、ライルは俯いたアレルヤの頭を優しく撫でた。


「大丈夫さ。今日は特別だ。みんな沢山お菓子を用意してるはずだぜ?……試してみるか?」


椅子から降りたアレルヤはライルの足元まで寄り、彼のズボンをキュッと掴む。アレルヤと同じ視線になるようにしゃがんだライルは、挑発するかのように笑ってみせた。


「……とりっく…おあ、とりーと…?」

「はい、アレルヤ。沢山食えよ」


先程の袋をオロオロしているアレルヤに渡し、開けるように促した。
遠慮がちに、しかし大きな期待を含んだ瞳をキラキラ輝かせて、アレルヤは袋に手をかける。


「うわぁー…!!」


クッキーにチョコレート、キャンディーにマシュマロ。そこにあるのは世界中のお菓子を集めたと言って良いほどの、大量のお菓子。

ライルがくれた大きな袋には、色とりどりの、大量のお菓子が詰め込まれていた。それはまるで宝箱のようで、菓子から顔を上げたアレルヤは反射的にライルを仰ぎ見る。


「全部食っていい。全部アレルヤのだ」


その大群からひとつホワイトチョコレートを取り出し、包装紙を剥いた白いそれを小さな口に放り込んでやった。
自分の身長近くある袋を抱きしめていたアレルヤはビニールから手を離すと、ライルの白い頬に手をあてる。


「……ありがとう…!!ライル大好きっ!!」


あまりの嬉しさにアレルヤは、手をあてた反対側の頬に唇を寄せた。ハレルヤに教えてもらった、大事な人にしかしちゃいけないお礼。小さなリップ音と、チョコレートの甘と、ライルからするタバコの苦さが混ざり合って、アレルヤの心臓をキュンとさせる。


「……ありがとう。俺も、アレルヤ大好きだぜ。…ほら、ハレルヤにも言ってきな?」


うん!!と元気よく返事をしたアレルヤは、隣室に居るであろうハレルヤの元へと向かった。
それを見送ったライルは、結局台としては使用されなかった椅子を元の位置に戻して、沸かしたお湯をポットに注ぐ。

『あ……プリンださないと』

アレルヤの代わりに冷蔵庫を開けると、そこには昨夜同様4つの容器が大人しく鎮座していた。
アレルヤはカボチャが好きだったろうか、と考えながら先程の笑顔を思い浮かべる。


「ホント、可愛いねぇ…」


唇が触れた頬を軽くなぞると、微かにミルクの匂いがした。





―――――

ショタルヤとライルさんでした^^ハロウィンとっくに終わりましたが、実はまだ続きます←



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