Trick or Treat!
(ニル子アレ/ライハレ/ハロウィン)

アレルヤ幼児化、コス注意!
ショタコンディランディズ。
ブラコンハレルヤ。









「おじゃましまーす!!」

「じゃますんぜー」


アレルヤとハレルヤは、ノックもせずインターフォンも押さずに玄関のドアを押す。
それはまるで二人が訪れることがわかっていたかのように、何の抵抗もないままアッサリ家の中へと迎えた。自分の家のように入り浸っているこの家に来るのは、二人の手を合わせても数え切れない程の回数になっているはずだ。


「ハレルヤ!!っと、アレルヤ?今日は一段と可愛い格好だな」


玄関に入った瞬間、待っていたと言うように、この家の主の一人ライル・ディランディが二人を出迎える。
靴を脱いだアレルヤは、こんにちはと挨拶すると、自分を見つめるライルの視線に頬を染めた。

白いモコモコの上着に、フワフワな尻尾が付いた白のカボチャパンツ。頭にはこれまたフワフワなウサギの耳が付いた帽子を被ったアレルヤは、ニッコリ微笑み、ライルに向かってくるりと一回回って見せる。


「ハレルヤがね、作ってくれたの!!」

「あー…ハレルヤがねぇ…」


アレルヤの兄であるハレルヤは、狂暴な性格とは裏腹に手先が器用で可愛い物が好きだ。特にアレルヤに可愛い格好をさせることが好きなようで、頭の中は常にアレルヤの事でいっぱいというのは、あながち間違いではないだろう。
今アレルヤが着ているウサギの衣装も、アレルヤによく似合っている。


「似合ってるよ、すごく。可愛いなぁ…」

「えへへ、ありがとう……」

「ハレルヤ、今回のも気合い入れてたしな。こんだけ器用なんだ、良い嫁さんになれるぜ」

「うっせえ黙れタラシ」


ライルの顔さえ見ずに言い放ったハレルヤだが、それは何時もの事のようで言われた本人は特に気にした様子もなくアレルヤと服を見つめている。

確か前回ハレルヤが作った衣装は、夏祭り用のジンベイだ。落ち着いた色合いのそれは、アレルヤによく似合っていた。そういえば、あの時は家での寝間着用に浴衣も作ったはずだ。白地に鮮やかな花が咲いた、可愛らしい浴衣。
……考えてみると、だんだんハイレベルになっている気がする。

『こりゃ、クリスマスはえらいことになりそうだな・・・』



苦笑いするライルの耳に、ドタバタと階段を下りる足音が聞こえた。どうやら、彼が二人が到着したことに気付いたらしい。


「……アレルヤ?アレルヤ!!」


二階から現れたのはライルの双子の兄、ニール・ディランディだった。

実のところ、アレルヤはライルよりニールがお気に入りのようで、すぐさま彼に向けて小さな手を思い切り伸ばす。

ニールは、会うといつもアレルヤを抱っこしてくれる。ライルに抱っこされるのも嫌いではないが、アレルヤは彼から香る苦い匂いがどうも苦手だった。反対に、ニールはいつも甘い香りに包まれていて、アレルヤはその香りが大好きだ。


「久しぶりだなハレルヤ!アレルヤも、久しぶ……り…」

「…ニール?……ぅわっ…!?」


しかしアレルヤの期待とは裏腹に、いつまで経ってもニールの香りと温かい胸に包まれることはなかった。代わりと言ってはなんだが、アレルヤの苦手な苦い匂いが鼻先をかすめる。

ライルは呆然と立ち竦むニールを一瞥すると、未だにニールに向かって腕を伸ばしているアレルヤの背中を宥めるようにさすった。



「こらこら、今兄さんに近づいちゃダーメだ。ガオガオされちまうぜ?」


ライルの突然の言葉に、がおがお?と首を傾げるアレルヤには、その意味がわからない。
当然か、と苦笑するライルは、悪戯っ子のような笑みを浮かべてアレルヤとニールを交互に見比べた。


「ほら、この前読んであげただろ?赤ずきんちゃんのお話。今の兄さんは、赤ずきんちゃん食べちゃったオオカミさんと同じだぜ?」


食べるの意味は違うけど、と笑うライルに、ニールは反応を示す。そして不安げに自分を見つめるアレルヤに向かって手を差し出した。
………とりあえず、アレルヤを弟の腕から奪いたかった。


「騙されるなよアレルヤ!!そんな事言って、本当はライルがガオガオするつもりなんだぜ……!!」


アレルヤ離せ、と言わんばかりにライルを睨む。ライルも負けじとニールを睨み返すのだが、がおがお…と呟きながらニールとライルを交互に見つめたアレルヤは、ニールの顔を見た瞬間細い足をバタつかせ、イヤイヤするように首を振った。


「……!!ライル、離してー!!ニール!!ニール!!」

「……っ!!アレルヤぁ……」


途端に弱まるライルの腕からするりと抜けると、ニールの胸へと思い切りダイブした。
温かく香る甘い匂いに頬を埋めるアレルヤを泣きそうな顔で見つめるライルとは反対に、ニールは"幸せでいっぱい"というようにだらし無く頬を緩める。

そのまま軽い体をひょいっと抱き上げ、ウサギ耳の帽子を脱がせて深緑の髪に口を寄せた。そして、ギューッと胸に抱き着いているアレルヤを堪能すると同時に、勝ち誇ったような笑みを、嘲笑うかのようにライルに向ける。


「よしよし、危なかったな、アレルヤ。もう少しでライルにガオガオされるところだったぜ…?」

「ニール……がおがお、しない?」

「しないしない」


完全に二人の世界を作り上げてしまったアレルヤとニールが眩しくて、ライルは思わず目を背ける。


「うぅ……ハレルヤぁー」

「っは!!ざまぁねぇなぁ!!……おい、ジャガイモ!!アレルヤ離しやがれ!!」

ハレルヤは泣きつくライルを片手で制すと、アレルヤで遊ぶニールの元へと荒い足取りで向かった。大人しく三人の様子を伺っていたハレルヤだが、やたらアレルヤにくっつくニールにとうとう痺れを切らしたようだ。

一方、アレルヤに逃げられハレルヤにもスルーされたライルはと言えば、三人で楽しく騒ぐ様子を横目で見、唇を噛む。


「………っ!!こうなったら、ハレルヤにガオガオするしか…!!」


その、呟くように発せられた言葉を聞き取ったアレルヤは、銀の大きな瞳をさらに見開いてニールの服を引っ張る。やっぱりライルがオオカミさんだったんだ、と。


「……!!ニール、ハレルヤが!!ハレルヤがライルにがおがおされちゃうよー!!」


潤んだ瞳でニールを見上げるアレルヤは、ハレルヤが本気で食われるとでも思っているようだ。
必死に訴えるアレルヤの頭を撫でたニールは、少々冷めた目でライルを見つめる。加えて、うんざりしたような、げんなりしたような感じだ。


「あー……。あの二人なら、いつもガオガオしあってるから大丈ぶっ」

「死ねやこの!!!」


うっかり、というか自然と出てきたその言葉を、ライルではなくハレルヤが塞いだ。
乱暴にアレルヤを奪還したハレルヤは、頭にクエスチョンマークを浮かべたアレルヤをライルに押しつけると、赤く染まった頬のままニールの胸倉を掴む。明らかにご機嫌ナナメだ。

「うるせえ」だの「黙れ」だのとニールを絞めるハレルヤだが、アレルヤを抱き上げるライルと目が合い、バツが悪そうに目を反らす。そして次の瞬間には、更に力を込めてニールの胸倉を締め上げた。





「……ライル?あの…ライル?」

「………。アレルヤ、ちょっとお茶入れるのを手伝ってくれないか?」


気が付くと、服を引っ張るアレルヤと目が合った。ボーっとしていたことに気付かれないように、何か理由を探した結果がこれだ。

まだ小さな彼の目線にあうよう床に膝をつけるライルを、アレルヤは上目がちに見つめる。モゴモゴ口を動かしているのは、何か言いたい事があるときのアレルヤの癖だ。


「がおがお……」

「……。あー……ガオガオとかしないから、心配するなって」

「本当?ライル、良い子する?」


俺はいつでも良い子だぜ、と困ったように笑うライルを、アレルヤはジーッと見つめる。
ライルが嘘をついていないのはすぐにわかった。彼が嘘を付くときは、こんな風に眉毛を下げて笑わないとアレルヤは知っていたから。


「…お手伝い、する!」


すっかり警戒心を解いたアレルヤは、袖を捲ってくれと言うように手を差し出した。
上着を脱がせ、服を肘辺りまで捲ってやった後で、いい子だなぁ、と深緑の髪を撫でる。本当に、この歳にしてはいい子すぎるかもしれない。


「今日のおやつは何だろうな?」

「おやつっ!おやつっ!」


背後から聞こえる怒号と叫びをBGMに、ライルはぴょんぴょん跳ねるアレルヤの小さな手を握った。



どうか、できるだけ早くハレルヤの機嫌が収まるようにと願いながら。



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