スキンシップじゃなくてセクハラです 2/3



バールへ着くと騒がしい声が入り口にも聞こえてきた。

もう既に、バールへ集合しているのであろう。

いつもの様に、特等席となっている奥のテーブルへと向かう。


「あ〜〜〜!!!ミスタ!!!!俺のショートケーキィ〜〜!!!!」

「あぁ、ナランチャすまんすまん。そこにひとつだけケーキがあったからなぁ。ひとつだけ!」

まるで俺に食ってもらいてぇみたいじゃあねぇか!
そう言って最後の1口を口へ運ぶ。


「ちくしょ〜〜〜!!!!1番最後に食べようとしてたのに〜〜〜!!!!」

バタバタ地団駄を踏むナランチャをよそに、アバッキオとフーゴは優雅に紅茶を飲んでいる。


「も〜〜〜!ナランチャってば、入口まで丸聞こえ〜!勘弁してってばぁ!」

さすがにこれ以上ヒートアップしたら、お店が壊滅してしまう!!!!

アバッキオもフーゴもなんで注意してくれないの!


「あれ、なんだゆきじゃないですか。チャオ!」

カチャン、とフーゴがカップをソーサーに置く音が軽快に響く。

「チャオ!もうみんな揃ってるのね!お早いこと!」

「ふ、みんなだと?お前の目はバカか?…お前の大好きなブチャラティがいねぇじゃあねぇか」

呆れたように半笑いでアバッキオはヤツの名前を口にする。


そう、ヤツの名前をーーーー。


「ちょっと、やめてよアバッキオ!!!ヤツの名前を呼ばないでっ!!!!!ヤツの名前なんか呼んだら」


現れちゃうじゃあないの!!!


そう口にしようとした瞬間。


「ヤツって誰だい?ゆき。それってもしかして、オレの事じゃあないよな???」


ビクッッッッ!!!!!!!

まるで効果音が聞こえてしまうのではないか、というほど驚いてしまう。

「ブ、ブチャラティ…いつからそこに…。」

錆びたブリキの人形のようにギギギ…と振り向くゆき


「いつからってそりゃあ、ずっとだぜ?いやなに、ちょっとばかし早く仕事が終わってな。ゆきが仕事している様子を見ていたってわけだ。」


この発言でなければ、街の女の子達はキャーキャー騒ぐであろう爽やかな笑顔でそう言った。


「ちょっと待って、私が仕事している様子って…。」


あの時からずっとって事じゃあないの!!!!??


「バールへ向かう途中、ゆきに気安く話しかけてきたやつは、俺がちゃんと話せねぇよう塞いできてやったぜ?この俺の、スティッキィ・フィンガーズでな。」


ーーー確かに。

バールへ向かう途中、街でチンピラが声をかけてきた。無視してもしつこく話しかけてくるので、マリオネット・ドールで操ってやろうか…なんて思ってはいた。

しかし男は突然黙りこみ、ついてこなくなったので
ラッキー!なんて思っていたのだ。

それがまさか。
ブチャラティのおかげだったとは…

思わずありがとう。なんて言いそうになったが、いやいやいや!!!そもそもおかしいんだった!!!

 

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