大人しいとなんだか寂しいです 3/5



アバッキオに押し付けられた書類と買ってきた心ばかりの栄養ドリンクが入った袋を抱えて、ゆきはまたもや溜息をつく。


チャイムのボタンを前に、手が止まる。


「(ブチャラティ寝てたらどうしよう…。てか、起き上がれるの…??)」

ブチャラティの様子をああでもない、こうでもないと考え、ただ時間だけが過ぎていく。


「(…ええい!!悩んでも仕方ないっ!!!)」

ようやく決心をしてチャイムを押した。

小さいけれど軽快な、チャイムの音が聞こえてくる。


「(…やっぱり寝てるのかも。)」

待てどもドアが開く様子がないので、バールで時間を潰してまた来よう。

と、後ろを振り向いた瞬間。


カシャン。

鍵が外れる音がした。

音につられ振り返ったと共にドアが開く。


「…やぁ、ゆき。」

今にも倒れそうな程フラフラなブチャラティが顔を出した。


「ちょっと!!!大丈夫!???」

持っていた荷物を片手にに抱えて、ブチャラティを支える。

「すまないな、ゆき。どうやら俺は風邪をひいてしまったみたいなんだ…。」

「いやいや、見たらわかるから!とゆーか、アバッキオから聞いたよ…熱があるんでしょ?フラフラじゃあないの!」


ブチャラティの重みに顔を顰めながら、ベットへと連れていく。

動いた時にふわりと香る、ブチャラティの香りに少しだけドキッとした。

きっと、ブチャラティの体温のあがった熱い体にあたっているからだと自分に言い聞かせる。


まるで息も絶え絶えかの様にベットの縁に座ったブチャラティへ、アバッキオから預かった書類を渡す。


「ごめんブチャラティ、しんどいと思うんだけどこれだけサインして欲しいの…」

机がなくてもサインを書きやすいように、予め用意しておいたバインダーを書類の下に滑り込ます。


「…わざわざ悪いな。」

「い、いや、全然気にしないで!」


いつもはさすが俺のゆき。やら、未来の奥さんは違うな。とかふざけた事を言ってくるのに、今日のブチャラティはなんだか調子が狂う。

 

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