大人しいとなんだか寂しいです 2/5
「おい、ブチャラティなら今日は風邪で休みだぜ。」
「え、そうなの?めずらしい。」
しっかりした性格のブチャラティが体調を崩すなんて事は、年に1度あるかないか。
もしかしたらもっと少ないかもしれない。
「何やら熱があるみてェだぜ?」
「ふぅ〜ん、可哀想に…って何その目。」
アバッキオの何か言いたげな瞳がこちらを見る。
あの顔は絶対よからぬ事を言い出す顔だ。
長年の付き合いにより、ゆきの脳が告げていた。
「あ、私そういえば用事が…」
「おいおい、今日はお前ェ特にねぇだろうが。…ちょっと俺から頼まれてくれや。」
「ううっ…」
頼まれたら断れない性格のゆきは呻き声をあげる。
どうせろくな事じゃあないでしょ!
なんて頭の中で悪態をつく。
「ジョルノとかにお願いすればいいじゃあない!」
1番年下なんだから動かせなくちゃあね!
とちらりと横目で、優雅に未だ新聞を読んでいるジョルノを見る。
「あー、ジョルノは駄目だ。あいつはもう仕事を任せてるからな。アイツらには頼めねんだよ。」
そう言われてしまっては、聞かざるをえなくなってしまった。
大人しく腹を括ってアバッキオの話へ耳を傾ける。
「実はよォ、明日までに仕上げねェと駄目な書類があるんだが…。ブチャラティのサインだけあと必要なんだ。…ゆきお前ェ、ちょっくら届けてやってくれ。」
ゆきの返事も聞かずアバッキオは書類を押し付け「頼んだぞ。」とひと言告げて立ち上がると、部屋を出ていってしまった。
書類を押し付けられたゆきは、ついに暴れ始めたフーゴとナランチャの怒号を聞きながらため息を吐いた。
← →
26/29