くっつかないでください移ります変態が 5/7
薄ら目を開けると、殴りかかろうとしていたチンピラの手がジッパーとなって外れかかっていた。
「お、俺の腕が…っ!!!何なんだァこれはっ!!!????」
このジッパーは…。
「ブチャラティ…!!!!」
後ろを振り向くと、息を切らしているブチャラティがいた。
「間に合ってよかった…ゆき…っ!!!」
ブチャラティはスティッキィ・フィンガーズでチンピラを殴る。
「ぅぐ…っ!!!」
ガシャーン!という大きな音と共に、チンピラはバールのテラス席へと吹っ飛んだ。
ブチャラティはゆきの側へと近づくと、手を取り走り出す。
「ぅわ、っと!」
「ここはローマだ、俺達の縄張りじゃあない。…騒ぎを起こしたとバレたら面倒だ。逃げるぞ!!!」
「…わかったわ、ブチャラティ…!!!」
ちらりと走りながらブチャラティを見る。
ブチャラティは汗をかき、珍しく息を切らしている。
まさか、ずっと走って探し回っていてくれたのだろうか。
「…ありがと、ブチャラティ。」
小さな声で呟く。
「…?なんか言ったかゆき?」
「べーつに!なんでもないっ!」
2人の手は繋がれたまま、ローマの街を駆けて行った。
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