スローモーションで死は降りそそぐ
敵ギャングとの抗争。
きっかけは確か、くだらない事だったように思う。人の命を懸けるには、取るに足らないしょうも無い事だ。
それでもギャング達はそのしょうも無い事に意味を見いだし、自らの尊厳のため。はたまた尊敬する上司のため。または課せられた運命のために、命を懸けて戦うのだった。
ブチャラティチームに所属するゆきも、その内の一人である。
生きる事に無関心だった頃にブチャラティに拾われ、生きる力を手に入れ、愛を知り、悲しみを知り、どうしようも抗えない運命の儚さを知った。
そしてゆき自らの命運はいま、尽きようとしていた。
不意の襲撃を受け、返り討ちにしたもののどうやら受けた弾の当たり所が悪かったらしい。
意識は朦朧とするし、極めつけは自分の片割れでもあるスタンドが粒子となって消えかけていた。
あぁ、これが走馬燈というやつか。なんて思うほど、いろいろな思い出が頭を駆け巡ってくる。
振り返るとこの人生、最低だった人生はブチャラティに拾われて以降、キラキラ輝いていたように思う。生き返ったように人生を謳歌した。自信を持っていえるだろう。
たった一つの心残りを除いては。
きっと私が死んだら愛する彼は悲しむだろう。きっと悲しいのに心の奥に押し込んで、表面状では普通を振る舞う。矛盾に満ちた、正義感の心を持つ愛しき人"レオーネ"
レオーネならきっと、私の死んだ事の意味とその真実にたどり着いてくれるだろう。だから、不思議と死する事に恐怖は湧かなかった。
きっとレオーネにそんな事いったら「バカヤロウ。もう黙ってろ。」なんて言いながら優しく抱きしめてくれるんだろうな。
最後の最後までレオーネの事を考えているなんて、笑えてくる。もう、ほとんど意識なんて無いんだけど。
最後に力を振り絞り、きっと私の元へとたどり着いて"再生"してくれるレオーネへ最後のメッセージを送る。笑顔で。だって最後の姿が醜いなんて嫌じゃあない?
フェードアウトしていく世界の中で、彼の幸せだけを願った。
スローモーションで 死は降りそそぐ 精一杯"愛してる"
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