寝たフリ大作戦!
夜もどっぷり更け、今日が昨日になった頃。ひとり寂しくベッドに入り、ゆきは寝付けずにいた。
所謂ギャングという仕事を生業にしている恋人とは、すれ違いの生活を送っている。一緒に生活を共にするようになって、なんだかんだ慣れると思っていた生活は、未だ慣れる事もなく、今日もただ寝つけずに時間だけが過ぎていく。
寂しいのだ。
ジョルノがいないと寂しくてなれない。恋しくて、恋しくて、しょうがない。でも、意地っ張りな可愛くない私は口が裂けても"寂しい"なんて言えなかった。
だって、子供みたじゃあないの。ギャングスターの女が寂しくて寝れたいなんて、そんなのジョルノに釣り合わない。
だから私は今日も寝た"フリ"をするのだ。
「ただいま、ゆき。」そう言って"寝ている"私の頬にチュッと軽いキスを落とす。私を起こさない様に、静かに、優しいキス。
ぴくりと反応してしまいそうになる身体を必死に誤魔化す。「(平常心…平常心…)」そう心に言い聞かせる。だって、寝ているんだもの。
そして頬から唇が離れたかと思うと、ジョルノはそっとベッドに投げ出されてるゆきの髪を撫でる。そのまま今度はその毛束を持ち上げキスを落とす。
近づくジョルノから、ふわりと香る大好きな香り。目を瞑っているからか、はたまたジョルノを求めているからかは定かではない。だけど、先程までは感じれなかったジョルノの匂いがする。
「(あぁ、落ち着く…。)」
ジョルノが近くにいる。それだけでゆきは満たされる。
単純、そう言ってしまえばそれ迄かもしれない。しかし、それ程までに繊細にゆきはジョルノを愛しているのだ。
そして何故かゆきはいつもジョルノを感じられた瞬間、魔法にかけられたかのように眠りに着くのだ。自分の事なのに毎回不思議に思う。しかしゆきはその眠りに落ちる時が堪らなく好きだった。
「僕の可愛いゆき。寂しいのに強がるその姿が、イジらしくて愛おしい。好きです。愛してます、ゆき…。」
ジョルノは目を細め、愛おしげにゆきの頬に触れる。そして徐々に2人の距離は縮まっていく。あっという間にその距離、0センチ。
結局いつも堪えきれなくなったジョルノが、ゆきの唇に自らの唇を押し付けるのだ。ゆきをゆき本人よりも、ジョルノが独り占め出来る時間。ジョルノはその瞬間が堪らなく好きだった。
しかし人間というのは、欲深い生き物であるとジョルノは思う。もっと、もっとと求めてしまうのだ。
「(我慢だ、我慢。…でも、あとちょっと触れるだけなら)」
次第にモヤモヤして寝れなくなったジョルノが、己のプライドと意地をかけ、ゆきが起きる頃にようやく寝た"フリ"を決意するのはまた別のお話。
寝たフリ大作戦!
「おはよう、大好きよダーリン」 なんて、無邪気な君に 「(…僕もですよ、ハニー)」 と、心の中で返事をする。
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