4部 short小説 | ナノ
たったひとつの 3/4
「(もしかしてアイツ・・・チョコ作ってねぇのか・・・??)」
それから仗助は授業中もゆきからのチョコに対して、頭がいっぱいだった。
その事ばかりが頭を駆け巡り、気がつくとお昼休みになっていた。
仗助とゆき達はいつも一緒にお昼ご飯を食べている為、いつもの場所へと集合する。
そわそわしながらチョコを待つ仗助だったが、ゆきは億泰と話してばっかりでチョコを渡してくる様子はない。
そうしている間にもお昼休みは終ってしまい、言い出せないまま授業が始まった。
「(おいおいおい・・・ッ!!マジにゆきのやつチョコ持ってきてねェのかよォ・・・)」
頭を抱える仗助。
今の仗助はさっき貰った数々のチョコレートなんかより、ゆきから貰えるチョコレートだけが価値のある物だと感じていた。
「(こんなにチョコ貰ったって、ゆきから貰えなけりゃあ意味ねェぜ・・・)」
もうすっかりしょぼくれている仗助は、放課後ゆきとデートの待ち合わせをしているため、ふてくされながら教室で待つ。
いつもはペチャンコな仗助の学生鞄は、今日だけチョコレートでパンパンになっていた。
そのうちガラガラと教室のドアが開き、ようやくゆきがやってきた。
「ごめんね仗助!遅くなっちゃった!」
「別にいーけどよ、なんかしてたのか?」
何気なく仗助は聞いた。
「クラスの男子にチョコあげてたの!」
にっこりと笑顔でゆきは言う。
「チョ…っ!????」
思わず仗助は机からずっこける。
「ちょっと仗助、大丈夫!???」
「(俺にはチョコくれねェのに…仗助くん、泣いちゃうよ…。)」
ゆきに腕を支えられ起き上がる。
そのままゆきはチョコでパンパンのカバンを拾い上げ、仗助に渡す。
「ほら、帰ろ?」
そう手を引っ張ってくるゆきのなすがままに、学校を後にした。
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