好きだから 3/6
ゆきとブチャラティの距離は、つかず離れずといった距離であった。
アバッキオはいたたまれず、早送りを始めた。
倍速で動く2人は買い物を楽しみ、時にはバールによって軽食をとったりと、まるでデートのような時間を過ごしていた。
日が暮れ、2人はネアポリスでも高級なブランド店が建ち並ぶ通りへと向かっていった。
その中でも一際目立つ、高級ジュエリーショップへと歩んでいく。
思わずアバッキオは倍速を止めた。
当然ながら、2人の会話がきこえてくる。
「ゆきはどんな物が欲しいんだ?」
「それが悩むのよ…どんなのも合いそうだし…」
「ふむ、それは困ったな。…このままだと悩んだ物全部買っちまいそうだ。」
「ふふふ!もう、ブチャラティったら!」
仲睦まじい2人の会話を聞いたアバッキオは、静かにムーディー・ブルースで追跡するのをやめた。
きっとブチャラティくらいの男ならゆきに指輪の1つや2つ、簡単にあげるのだろう。
そしてそんなゆきも、ブチャラティみたいな男がお似合いだ。
いっそ、俺みたいなやつよりもな。
アバッキオはモヤモヤする心を押し込み、ゆきがいる家へと帰った。