キズを治せる君へ 2/2
護るって誓っておきながら、なんてザマだ。
もちろんジョルノは、このパッショーネのボスだけあって、ゆきの助けなんか必要ないくらい強い。
ゆきが護ると誓ったのは、ジョルノのその心の部分なのだ。
まだ世間では少年と呼ばれる歳でありながら、時に厳しく、時に残酷に生きていかねばならない彼にとっての、心の支えになりたい。
そう、思っているのに。
「ごめんね、ジョルノ…」
「なぜ、ゆきが謝るんですか。」
ジョルノの美しい金髪が揺れる。
その髪にゆきは触れ、そのままジョルノを抱きしめる。
「もう、絶対、躊躇わない。」
「…ゆき。無理しなくていいんですよ。」
別に、ゆきがその任務を引き受ける必要はないんですから。
そうジョルノは言う。
既に決まっている次の任務も、反抗する組織のものを始末しなければいけないのだ。
ジョルノの傷つく顔を見てゆきは思った。
本当に怖いのは、相手の可能性を奪う事じゃあない。
ゆきにとって怖いのは、ジョルノが傷つく事なのだ。
その事に気付いたゆきは、覚悟を決めた。
ーーーーー数週間後。
ゆきは今日も、下された任務を遂行していた。
残るは、あとひとり。
自らのスタンド能力を駆使して、相手を追い詰める。
ようやく追い詰めた相手は叶わないと悟ったのか、ゆきに命乞いをする。
まだ死にたくない。俺には小さい子供がいるんだ。助けてくれ。
そう、血塗れになった身体を丸ませ必死に告げてくる。
ゆきは瞳を閉じる。
そして、手を握る。
ーーーー男は、叫ぶ暇もなく塵となった。
ゆきはそっと目を開き、後ろを振り向くことも無くその場を後にした。
ガチャり。
そう音を立て、組織に帰ってきたゆきはジョルノがいるであろう部屋の扉を開ける。
いつもは、血だらけで意識も朦朧としながら開ける扉である。
音に反応してジョルノは、振り返る。
「ただいま、ジョルノ。」
そう言うと、ジョルノは笑顔で手を広げる。
ゆきは、そのジョルノの腕へと勢いよく飛び込んだ。
「おかえりなさい、ゆき。」
傷一つないゆきの身体を抱きしめ、ジョルノは言う。
その嬉しそうな、ほっとした声を聞いてゆきは安心した。
ゆきはジョルノのこの笑顔が好きで、護りたいと思ったのだ。
もう、怖いものは何も無い。
これがキズを治せる君への最高の、恩返しだと思うから。