infermieraのお仕事 2/4
それから数日…
まだかまだかと来院を待つ日々が続いていた。
しかしよくよく考えれば、患者さんはなるべく来ない方が良い。
という当たり前の事をすっかり忘れていたゆきは、それに気付いた日からもはや待つ事を辞めたのだった。
そして院長先生のお願いもすっかり忘れ果てた頃。
「愛咲さん!!!患者さんが来られたわ!対応して頂戴!!!」
「か、患者さん!!!?」
相変わらず書類を整理していたゆきは、突然の指名に驚く。
「奥の第3処置室にいると思うから、急いで行ってね!」
「え、あ、はい!!!」
丁度まとめ終わった書類を棚に戻し、慌てて処置室へと向かう。
ーーーガラガラガラッ!!!!
処置室の扉を勢いよく開ける。
「あー!やっときたぜーー!遅せェよ!!!」
そこには額からダラダラと血を流している少年と、ビシッと着こなした白いスーツが所々血に染っている青年が立っていた。
「あ…あなた達!!!どうしたんですかッ!????」
あどけない表情が残る可愛い少年と、よく見ると端正な顔つきをしている青年は、その綺麗な顔に似合わない真っ赤な血を流しているにも関わらず、ケロッとした顔で
「ちょっと一発食らっちまってよォ!」
「かすり傷なんだ、問題ない。」
なんて言ってるもんだから、彼等が院長先生の言っていた"お世話になっている人達"という事も忘れて、ついついプッツンときてしまった。
「い…」
「「い???」」
「いいからそこに、座りなさいーーーーッ!!!」
立っていた2人を無理やりベッドに座らせ、手当を開始した。
見れば見るほど痛々しい傷の数々に、なぜ彼らはさっきまで普通に立てていたのか、とても不思議に思う程だった。
「いててててッ!いててッ!!!染みる、染みるッッ!!!」
額から血を流していた少年…ナランチャくんは、消毒液から逃げる様に腰を引く。
「こら!逃げないで!!!バイ菌が入ったら大変じゃあない!…いったいどうやったらそんなに怪我まみれになるの???」
消毒を終え、くるくるとナランチャの額に包帯を巻きながら尋ねる。
「あぁ?だって俺ら、ギャングだしィ???」
その一言で、包帯を巻く手が止まる。
「…え、今なんと…???」
「いや、だから俺らギャングなんだって。…ってあれ?院長から聞いてねェの???」
「ギ、ギャンむぐっっっ!!!」