夢が叶うその日まで 8/11
「…俺はゆきの歌が好きなんだ。歌ってるゆきが、ずっと昔から好きだった。俺は嫌なんだ。俺のせいで、ゆきが歌えなくなるのは…」
ブチャラティが今度はゆきの腕を握る。
「もう、ーーーーこれっきりだ。」
ゆきの瞳からは大粒の涙が溢れる。
なぜブチャラティは昔から、自分が傷つく事しか選ばないのだろう。
ブチャラティはその優しさ故、自分を不幸にしている。
「ーーーーわかった。ブローノ。」
ゆきはブチャラティを見つめる。
「私、世界で1番の歌手になる。」
「…あぁ。」
「1番になったら、帰ってくる。…ブローノのところへ。」
「っ!!!」
「ブローノは、私がいないとだめになる…。私、分かるの、ブローノは優しすぎる。いつか、絶対だめになる…。
だから、待ってて。私が1番になるまで。」
そう告げ、ブチャラティへと今度こそ抱きつく。
「ーーーゆき…ありがとう。」
ブチャラティも抱きしめ返し、ふたりはしばらくその時を味わった。
会えなくなる時間を埋めるように。