希望 4/4
よしよし、っと愛おしそうに赤子を見つめるゆき。
「ゆきさん…その子…。」
その赤ん坊はゆきに抱っこされて、嬉しそうにきゃっきゃっと笑っていた。
その顔は、まるでーーーーー。
「似てるでしょ、ブローノに…。」
赤ん坊の顔は、ブチャラティによく似ていたのであった。
「ブローノがいなくなる少し前に、この子がお腹にいる事が分かったの。…驚かそうと思って、次に帰ってくるまでって、伝えてなかったんだけど…。伝え損ねちゃった。」
そう、切なく微笑むゆき。
「そう、なんですね…。私、ゆきさんや、その子に、顔向けできないです…。」
ブチャラティによく似た赤ん坊は、トリッシュへとその小さな手を伸ばす。
「この子、スペランツァって言うんです。イタリア語で、希望っていう意味で…。
…きっとブローノは、あなたや仲間たちに希望を見たんだと思います。だから、命を懸けてまでも守った。
だから、ブローノの為と思って、希望を持って生きて!
私は、ブローノが守ったあなたを、守ってあげたいと思うわ。」
トリッシュに笑いかける、スペランツァ。
「この子もブローノに似て、悲しい人をほっとけないのよ。」
きゃっきゃっと、懸命にトリッシュへと手を伸ばすスペランツァに、トリッシュは何とも胸がいっぱいになる。
「…私も、ブチャラティみたいに、あなた達を守れるでしょうか。」
そっと、スペランツァの小さな手を握るトリッシュ。
「…もう、守ってくれてるわよ。だって、こんなにこの子が笑顔なんですもの!
それに、私あなたを見てるとなんだか懐かしい気持ちになるの。…なぜかしら?」
「ブチャラティのお母さんにも、似たような事を言われました。
…きっと、私がブチャラティの真似をしているからだと思います。…彼が私にしてくれた様に、同じ様になりたいと、思ってるからだと思います。」
その一言で、気丈に振る舞って我慢していたゆきの瞳から、涙が溢れ出す。
「ありがとう、トリッシュ…。本当に、ありがとう。」
しばらく涙は流れていたが、涙を流してすっきりしたのか、ゆきはブチャラティによく似たスペランツァをぎゅっと抱きしめ、涙を拭う。
「トリッシュ、またこの子に会いに来てくれる?」
そう涙で濡れて、赤くなった目をこちらに向け微笑むゆき。
「もちろんです。ブチャラティが残してくれた、希望をーーー。守るために。」
トリッシュとゆきは、ブチャラティが残した赤子に、希望を見たのだった。
あの日、ブチャラティがジョルノに希望を見出した様に…。