この熱が消えぬよう 3/3
あぁ、そうか。
私はこんなにブチャラティと一緒にいながら、彼の事を、ひとつも分かってなかったんだと理解した。
この人はとても優しい人で、そして、とても弱い人。
いままで、ずっと胸につっかかっていたモヤモヤが吹っ飛んだ気がした。
「…私も、ずっと思ってた。ブチャラティとは…もう離れた方がいいんじゃあないかって。
一般人で何も力のない普通の私が、ブチャラティと一緒にいちゃあいけないって、思ってた。思い込んでた。
…私は、ただ怖かったんだと思う。ギャングの女として、ブチャラティの隣にいるのが。
いつか…ブチャラティが消えちゃうんじゃあないかって。」
「ゆき…。」
私は、ブチャラティを見つめた。
ブチャラティと視線が絡み合う。
「ーーー私も、覚悟を決めた。」
一生を、この命ですらブチャラティに捧げる。
もう、後悔はしない。
「…私が、ブチャラティを支える。護る。誰がなんと言おうと…。
だから、ブチャラティも私を離す覚悟なんかしないで!!!私を、護る覚悟をして!!!
そして…死ぬ覚悟じゃなくて、生きる覚悟をして!!!!」
ブチャラティは驚いた顔をしてゆきを見る。
そして、いつの間にかゆきからこぼれ落ちた涙を拭う。
「…生きる覚悟、か。」
そう呟いたブチャラティは、笑っていた。
きっと彼も、最後の覚悟を決めたのだろう。
「ゆき、一生一緒にいてくれ。どうやら俺にはやっぱり、ゆきが必要らしい。」
そう言ったブチャラティは、ネアポリスの夜景よりも輝いてみえた。
「もちろんよ。私もブチャラティがいないと、きっとダメになっちゃうもの。」
生きている限り、何が起こるか分からない。
だからこそ、今ある一瞬を大事にしなければいけない。
2人は、手を繋いでネアポリスの街へと歩いていった。
この熱が消えぬよう、離れぬよう、大事に握りしめて。