この熱が消えぬよう 2/2
「ーーー寒っ!」
真冬の季節という事もあり、夜のネアポリスはよく冷える。
白い息を吐きながら、少し前を歩くブチャラティを見つめる。
いつも、ブチャラティとは距離を開けて歩く。
ギャングの彼は、常に危険と隣合わせ。
いつ狙われていてもおかしくない状態なんだという。
隣、歩きたいな。
なんて想いには蓋をして、滅多に着ないチェスターコートを羽織り、マフラーを巻いているブチャラティを追う。
街の外れにある、高い丘。
人もおらず、私とブチャラティだけの秘密の場所。
ここはどの場所から見るネアポリスの夜景よりも、美しいのである。
「綺麗だね、ブチャラティ。」
この時間は、唯一外でブチャラティの横に立てる場所。
そっとブチャラティの横へ移動し、その冷たい手を握る。
ブチャラティもそっと、握り返してくれた。
「俺は…」
「…え?」
いつも夜景を見ている間はお互い、無言であった。
が、今日はブチャラティが口を開いのだ。
ブチャラティは夜景を見ながら続ける。
「俺は、ゆきに何も与えてやる事ができねぇ。ギャングだから、ゆきにはいつも悲しい想いばかりさせて、すまないと思っている。
ーーー俺はいつ死ぬかも分からねぇ。
…覚悟は出来てるんだ。
パッショーネでのし上がって、ゆきの住むこのネアポリスを、平和にしたい。
だが、ゆきと離れる覚悟だけは…俺はいつまで経っても出来やしないんだ。」
そう、呟くブチャラティ。