おはようが聞きたくて 2/2
少しだけゆきさんと、角のパン屋の主人の噂話だったり、最近ネアポリスで流行っている映画の話だったり、他愛のない会話で盛り上がった。
「じゃあジョルノ、ゆっくりしていってね!」
次のお客が店に来た為、ゆきは店のカウンターへと戻って行った。
ゆきが作ってくれたパニーニを食べながら、先程来たばかりのお客と話すゆきを見つめる。
笑顔でお客と話すゆき。
もちろんそれが仕事なのだから当たり前なのだが、ジョルノは面白くなかった。
ゆきには僕だけの為にコーヒーをいれて貰いたいし、笑って欲しいし、喋りかけてほしい。
自分だけの為にーーーー。
日に日に強くなっていく自分の想いに、ジョルノは苦笑いした。
今はまだゆきさんには、仲のいいお客としか思って貰えてない、という自覚がジョルノにはあった。
もちろん、少しずつ自分を知っていってほしい、と思っている。
早く自分の想いを伝えたいと思う気持ちを抑え、今はまだ早いんじゃあないのか。と自問自答する毎日であるのだ。
時計をみると、集合時間が迫っていた。
パッショーネでもまだ下っ端の自分が、遅れていく訳にはいかないので、ぐいっとチョコラータを飲む。
ーーーー甘い。
まるで、今の自分のみたいだな。
なんて、ジョルノは思いながら席をたった。
「ゆきさん、ご馳走様でした。」
そうひと言ゆきに告げると、可愛らしく「はーい!」とかけよってきた。
相変わらず、可愛いなぁ。
ついつい、見てるだけで微笑んでしまうジョルノであった。
「ジョルノ、ありがとうね!いつも来てくれて…。私からの感謝の気持ち!」
はい!っと、掌に乗せられたのはハートの形のチョコレート。
ジョルノ好きでしょ?
っと、首を傾けてくるゆき。
あぁ、もうなんでこんなに僕の胸をくすぐるんだ!
「僕の大好物です。ありがとうございます、ゆきさん。…コレは僕からのお礼です。」
ゴールド・エクスペリエンスで、自身の服についているボタンをバラの花へと変えた。
「うわぁ!!!なんて可愛いバラなの!!ジョルノ凄いわ!手品なんか出来たのね!」
すごいすごい!と喜んでるゆき。
「ありがとうジョルノ!あなたへのお礼で渡したのに、また貰っちゃったね…。大事にするわ、この可愛いバラ。」
大事そうにバラを持つゆきに、ジョルノは幸福感に包まれた。
今すぐ抱きしめたい。
そう思ったが、ぐっとこらえゆきの手を握る。
「明日もまたきます。」
そう伝え、パッショーネのみんなが待つ待ち合わせ場所へと向かう。
あぁ、早く明日にならないかな。
そう思いながらチョコレートを口にする。
もどかしい気持ちと、ゆきから貰ったチョコの甘さが混ざって心地よい。
ジョルノは今日もいい日になりそうだと思った。
明日も、プレゼント何か送ろうかな。
ゆきさんのおはようと、笑顔を見るために。
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「おや、ゆきちゃん!なんだい、可愛いバラの花じゃあないか!」
「可愛いですよね…!私の大事な方から頂いたんです!」
頬を赤く染めるゆき。
そう遠くない未来に、2人の想いが実るのはまた別のお話。