紫が似合う君へ 3/4
「アバッキオ、そーいやァゆきはどうしたんだ?」
「あ?…知らねェよ、あんな女。」
何気なく、最近見かけない仲間についてミスタはアバッキオへ問いかけた。
しかし帰ってきた言葉は不機嫌MAXで。
思わず反射的に、苦笑いでその場を収めたのだった。
「おいおいおいブチャラティ、一体どーなってんだよ…!?」
そしてミスタは少し離れた場所で座るブチャラティの元へと、こっそりと耳打ちする。
「…あぁ、アバッキオか。ゆきと連絡が取れないんだ。もうすぐ3週間になる。」
「は!?そりゃ最近見かけねェって思ったわけだ!何やってんだアイツ…?」
「それに今日は、アバッキオの誕生日なんだ。…そりゃ惚れた女がいないってなれば、誰だって機嫌も悪くなるさ。」
そう言うと、ミスタとブチャラティは溜息をついた。
重苦しい空気のまま、あっという間に夕暮れ時になる。
今日行わなければならない仕事もひと段落つき、そろそろ帰るか…とみんなが立ち上がった時。
バターーーーンッ!!!
勢いよく部屋の扉が開かれる。
そしてその勢いのまま、部屋へ飛び込んできたのは…
「ゆきッ!!!!」
その名を呼ぶ声は、重苦しい空気を解決する物が現れて喜んでる者の声か。
もしくは、なんの音沙汰もなく心配していた部下が帰ってきた上司の嬉々とした声か。
それとも、愛する恋人が目の前にやってきた幸せの声か。
偶然にも全ての声が重なりあった。
「や!お久しぶり!」
「ひっ、久しぶりじゃあねェーよ!お前よォ!!しかも黒!!!」
「そう言われれば…焼けたか?ゆき?」
ミスタとブチャラティはゆきと軽く会話を交わす。
一方アバッキオは、不機嫌そうに明後日の方を向いていた。
「…アバッキオ、ただいま。」
あえてゆきの方を見なかったアバッキオだったが、その声につられて視線を向ける。
「…俺と会わない間に随分楽しんだんだみてーじゃあねェか。」
「ごめんてアバッキオ。怒らないで?」
「怒ってねェ。心配してんだよ。」
「うん、…ごめんね。どうしてもアバッキオに渡したくて…。」
ゆきは、小さな紙袋をアバッキオの前に差し出した。
ぽかんと紙袋を数秒見つめた後、アバッキオは口を開いた。
「何だコレは…?」
ゆきは照れくさそうに頬を触り、はにかむ。
「アバッキオ、今日誕生日でしょ?…どうしても、これを渡したくって。早く開けて?」
ゆきに急かされ、丁寧に放送された手のひらサイズの箱を紙袋から取り出す。
そしてリボンを解いていき、蓋を開けた。
中でキラキラと輝く美しいものがアバッキオの目に映る。
「…これは。」