ラッキーハプニング 3/3
もともとゆきの事が気になっていたフーゴにとって、このシチュエーションは絶好のチャンスでもあり、嬉しいラッキーハプニングだった。
フーゴも震える手で、今度はゆきの背中を優しくさすってやった。
そしてゆきが投げ飛ばした箱を目掛けて、パープル・ヘイズで攻撃する。
ちらりと見えた虫たちは、所謂害虫と呼ばれるヤツらであった。
フーゴ自身も、Gと略される生物や足が百本生えているようなヤツら(実際は百本もないですが。)は好きではなかった。
が、自身のスタンドはそれらを触れることなく始末することが出来るのである。
強力な殺人ウイルスが入ったカプセルを、そのうごめく害虫達へと叩き付ける。
きっとこれで中の虫たちは全く罪はなかったのだが、跡形もなく死滅したことだろう。
「もう大丈夫ですよ、その虫たちは僕がパープル・ヘイズで排除しましたから・・・。」
「ほ・・・本当・・・?」
「はい、本当です。・・・僕がゆきに嘘を言ったことがありますか?」
「ううん、ない・・・と思う。」
「ちょっと、そこは断言してくださいよ。・・・ほら、ゆき。いつまでもこうしてる訳にもいかないでしょう?」
フーゴは名残惜しさを感じながら、ゆきをそっと優しく起こさせる。
そしてそのままフーゴ自身も立ち上がった。
ゆきはすっかりこの廃墟に怯えてしまったようで、立ち上がってからもフーゴの体から密着して離れようとしなかった。
「・・・ゆき、そんなにくっつかれたら歩きにくいです。」
そうフーゴは、にやけそうになる頬を必死に押さえながらゆきに言う。
一方ゆきはそんなフーゴのことなど露知らず、より一層離れまいと抱きつく腕に力を込めた。
「(フーゴの近くにいれば虫も来ないはず…っ)」
「(なんというラッキーなんだ・・・っ)」
ふわりと掠めるゆきの香りに、フーゴはこの上なく幸せな気分へと舞い上がる。
こんな素敵な任務をくれたブチャラティに感謝しながら、ゆっくりゆっくりとフーゴは出口へと歩いて行った。
「(またブチャラティに、ゆきと一緒の"こういう"任務を宛がってもらおう・・・。)」
フーゴは幸せな余韻に浸りながら、そう思ったのだった。
そしてその日からなぜかゆきとフーゴの元には捜索系の任務と、ボロボロな廃墟がセットになった命令がブチャラティから告げられるようになったのであった。
「ねぇ、フーゴ・・・。私たち何かブチャラティを怒らせるようなことしたっけな・・・?」
「さぁ、僕は何も知らないですけど。・・・きっとたまたまですよ。」
そう言って、フーゴはとても綺麗な笑顔でゆきに笑いかけた。