歩む道 4/4
そしてその"スタンド"が見える人が、自分以外にもいる事にとてつもなく安心感を感じた。
もう一度ゆきは、スタンドを見る。
どことなく、ゆきと視線が合うことに嬉しそうにしている様に見えた。
「…今まで、ごめんね。」
そう呟くと、まるでその言葉を理解しているかのようにスタンドは頷いた。
「これは、あくまで提案なんだが…」
男は真っ直ぐな瞳でゆきを見る。
あまりにも真っ直ぐに見られる為、ゆきの心臓はまた再びドキッと音を立てた。
「見たところ、君はまだスタンドを使いこなせていない。それどころか、今初めて自分の他に見える人を見つけたって感じだ。」
「…はい。そう、です。」
「俺は君の、突然男にナイフを突きつけられても動じないその精神力に驚かされたんだ。…そしてそれを見込んで提案しよう。」
その男は腕を組み、さっきまでは気が付かなかったがその端正な顔をさらに引き締めた。
「俺の名はブローノ ブチャラティ。この一帯を仕切るギャングの下っ端だ。…君のような強い精神を持っているヤツが欲しい。」
「…っ。」
「俺と一緒に来てくれないか?」
ブチャラティの瞳には、覚悟が宿っていた。
そしてゆきはそのブチャラティの覚悟に、心を奪われた。
ーーーこの人に一生ついて行きたい。
何があってもついて行く。
この時のゆきはその気持ちが憧れなのか、恋なのかさえ分からなかったが、初めて抱いた自分の気持ちに従うことにしたのだった。
「私は、愛咲 ゆきって言います。…ブチャラティさん、あなたと一緒に行かせてください!!!よろしくお願いしますっ!!!」
ブチャラティは嬉しそうに笑い、ゆきの手を取った。
「これからゆきの歩む道は、辛く厳しい道になるだろう。だが、それこそがゆきの歩むべき道なんだ。
…俺が全力で護ると誓おう。これからよろしく頼むぜ、ゆき。」
「…はいッ!!!」
これが私とブチャラティとの出会いであり、運命の歯車が周り始めた瞬間だったのだ。
「(この人の背中を、一生護っていく。)」
ゆきは自らの心と、幼少から共に過ごしてきたスタンドへと誓った。