5年越しの 2/5
懐かしい、なんてつい最近の事のように思えてきた。
ふと時計を見上げると、時刻は午後12時。
そろそろお昼の時間だ。
最近見つけたお気に入りのバールにでも行こうかと、いつもの様に濃いルージュを塗って家を出た。
ざわざわといつもの様に賑やかな街を歩く。
だいぶ見慣れた街並み。
お昼時という事もあり、テラス席は沢山の人が座って束の間の休息をとっている。
ーーーーーカランコロン
心地よいベルの音が鳴る。
「いらっしゃい、ゆきちゃん。」
ここの所よく来ているからか、人の良いマスターは私の名前も覚えてくれている。
「ボンジョルノ!マスター!」
今日はお客さんが多いみたい。
キョロキョロと周りを見渡し、1番近くの空いてる席へと腰を下ろす。
「ゆきちゃん、今日は何にする?」
「じゃあ、パニーノとエスプレッソをお願いします。」
いつも頼む、おいしいパニーノはわたしの大好物。
ここのマスターの作るものはどれも絶品だ。
程なくして、マスターがパニーノを持ってきてくれたので頬張る。
「おいしー!」
ついつい声が出てしまうほどに。
もうひとつのパニーノに手を伸ばした時。
ーーーーーカランコロン
扉が開いた。
音とともに顔を上げる。