もっと話したい 4/4
こんな端正な顔つきの人に見つめられれば、例え同性であっても心臓がドキリとするだろう。
そもそも男性に免疫がないゆきは、頭がクラクラするほどの衝撃であった。
「…あ、ありがとうジョルノくん。」
「いえ、"どういたしまして"。」
「に、日本語…本当上手だね…」
謙遜ではなく、違和感なく発せられる日本語に素直に感心する。
「もうだいぶ忘れてしまってるんですけどね。残念ながら、単語しか喋れないんです。」
「それでも凄いよっ!…私、久しぶりに日本語を聞くことが出来て嬉しかった。"ありがとう"ジョルノくん。」
「君が喜んでくれてよかった。やっぱり君は、笑顔が似合う。」
なんだかムズムズする様な言葉を、さらっとジョルノが伝える為ゆきはほんのり照れる。
「…ジョルノくん、本当にありがとう!お友達が出来たみたいで嬉しかった!私、そろそろ戻らなくちゃ…。」
名残惜しかったが、お昼が終わった次の授業は教室が離れた場所にある為もう行かねばならなかった。
「…分かりました。よかったら、君の名前を聞いても?」
ジョルノは名前も教えてくれたのに(正確には知っていたが)ゆきは自己紹介すらしていなかった事に気付いた。
「あ、ごめんなさい…!愛咲ゆきって言います!」
いつもは人見知りするゆきだったが、ジョルノが日本とのハーフと言うこともあってか、もう緊張は殆どなかった。
「ゆき。いい名前です…。ゆきはお昼の時、いつもこの場所に?」
「うん!ここ、静かでお気に入りなのよ。猫ちゃんもいるし…。」
ジョルノが現れて驚いて離れていってしまったものの、いつの間にか猫も彼に慣れたのか、ゆきの足元へと戻ってきていた。
「僕もまた、来てもいいですか?…日本語を教えて欲しいです。」
少し照れたようにジョルノは下を向く。
「も、もちろんだよ!!!」
ゆきもまさか日本語を教えてと言われると思ってなかったので、思わず大きい声で伝える。
そんなゆきを見て、ジョルノは微笑んだ。
「そう言ってくれると嬉しいです。…ではゆき、また明日。」
そう言ってジョルノはゆきに向けて手を振る。
「ま、また明日!ジョルノくんっ!!」
恥ずかしそうに小さくゆきも手を振り返し、教室へ戻るため歩き出す。
ジョルノのおかげで、何気ないこの毎日が楽しくなりそうで胸が高鳴る。
イタリアへ来ての初めての経験に、ゆきはとてもワクワクしていた。
そして、早く明日になれと心で願ったのだった。