群疑満腹 5



そのブチャラティの真っ直ぐな言葉に、ゆきを含む全員が圧倒された。


「(…昔と変わらない、自分の信じる道を進む心。きっとブチャラティのこういう所にみんな、惹かれていくんだろうな。)」


ミスタは暫く考えた後、ゆっくりと構えていた銃を下ろす。

「…ブチャラティがそこまで言うんだったら、仕方ねぇ。」


「俺も…っブチャラティが言うんだったら、そうするよッ!」

ナランチャも力強い声で、ブチャラティに向かって首を大きく縦に振った。


「…。」

アバッキオは静かに腕を組み、変わらずゆきを睨みつけるように見ているものの、何も言わないという事は異論はないという事だろう。


「…僕も別にそれで構わないです。」

事の重大さを理解したフーゴは冷や汗を流しながらも、ブチャラティに賛同した。


「一応言っとくけどよォ、ゆき…とか言ったよな?妙な真似したら、その可愛いお顔に穴が空くぜ。俺にはそれが出来ちまうからな…!」

「…。」

ブチャラティから、ゆきへと話しかけてきたミスタへ視線を移す。


「だが、俺達は出会ったばかりでお前の事はさっぱり分からねぇ。…信用出来る人間かは、これから判断させてもらうぜッ!俺はミスタってんだ。とりあえずは、よろしくだ。」


そのミスタの発言にブチャラティは、ほっとしたような表情になりチラリとゆきを見て口を開いた。


「とにかく、今日からゆきはチームの一員として行動する。特別扱いする訳じゃあないが…トラクティスさんが見込んだんだ。それなりに実力はある筈だろう。」


「…はい。トラクティスさんの顔に泥を塗らないように精進します!改めて、よろしくお願いします。」


ゆきは再び、ブチャラティチームの全員へと笑顔で告げる。


こうしてゆきのブチャラティチームへの顔合わせは、前途多難となったが無事に終わった。


とにかく今はチームの信頼を得て、トラクティスの地位を安全なものとなるように"うまく"やらなければいけない。


ブチャラティの横で覚悟を決め、ゆきは強く手を握り締めた。

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