群疑満腹 2



特に会話もないまま、二人を乗せた車は目的地付近の駐車場に停車した。


「リストランテはこの近くだ。…ここからは歩いて向かう。」

そう言ってブチャラティは、しなやかな動作で車から降りる。


ゆきもブチャラティに続いて車から降りようと、少し遅れてドアに手をかけた。

と同時にドアが勝手に開く。


正しくは、ブチャラティがゆきの座っている側のドアを開けたのだが。


「(…っ)」

ゆきは驚いて、ドアに置いた手を自らの方へと引いて固まっていた。


そんな様子にブチャラティは首を傾げながら

「…どうしたゆき、降りないのか?」

と、右手を差し出し優しく問いかけた。


「…ううん、降りる。ありがとうブチャラティ。」

ゆきは差し出された手を押し返すと、そのまま足を降ろして素早く車から出る。


手を押し返されたブチャラティは、ひとつ苦笑いをしてゆきが車から降りたのを確認した後に、ドアを閉めた。


そして自然な動作でブチャラティはゆきの腰に手を支える。


「リストランテはこっちだ。…行こう。」

そう言ってゆきを仲間が待つリストランテへと案内するのであった。


人が行き交うネアポリスのメイン通りを抜け、車から5分程歩いたところでブチャラティは足を止める。


「着いたぜゆき。…ここが俺の仲間が待つリストランテだ。」

ゆきの方へと振り返り、リストランテの入り口に足をかけながらブチャラティは笑った。


「…随分、優雅な仲間たちなのね。」

想像していたリストランテより、だいぶ立派な建物にゆきは顔を顰める。


「優雅なんかじゃあないぜ。ここのリストランテも、オーナーの懇意で利用させて貰ってるのさ。…まぁ、もちろん味も絶品だがな。」


ブチャラティはゆきにウインクをしてみせると、リストランテの扉を開け店の中へと入った。


ゆきもブチャラティの後を追いかけ、ブチャラティチームが揃うリストランテの中へと一歩踏み出したのだった。

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