怯える心 2



あの任務から、2日経った頃。


"お父さん"から任務を告げられる事もなく、自由気ままな時間を過していたゆき。


しかし特に趣味などないゆきは、ただぼーっとしながら窓の外を眺めているだけなのであった。


突然、激しい音を立て家のドアが開く。


そしてドスドスと歩く音が、ゆきの部屋へと近付いてくるのが聞こえる。


ゆきは覚えのある感覚にぶるりと身を震わせ、丸まって耳を塞いだ。


ーーーーーバン!!!!


「このくそガキがッ!!!!」


自室の扉が開かれ、"お父さん"はゆきへと近づいてくる。


「てめぇ、何やってたんだ!…ブチャラティ達にバレかけてんじゃあねぇか!!!!!」


そう言い、ゆきの長く綺麗な黒髪を掴む。


「ご、ごめんなさい…ッッ!!!!」


怖さと震えで、ゆきは体が動かない。


「俺は前から言ってるじゃあねぇか、完璧に殺してこいってよぉッ!!!!なにバレる証拠残してきてんだよッッ!!!!!」


激怒している"お父さん"は、髪を掴んでいる反対の手で思いっきりゆきの顔を殴る。


「ーーーっ!!!!」


その小さな体は吹き飛び、声にならない叫びをあげるゆき。


「俺の幹部の座が危なくなったらどぉしてくれんだあぁ????」


そう言って倒れてるゆきの前へとしゃがみこむ。


「一人ぼっちのお前の面倒を見てやったのは誰だ???…俺だろ???お前、まさか俺の顔に泥を塗るんじゃあ、ねぇだろうな…。」


その一言でゆきはガバッと上半身を起きあげる。


「そんなこと…っ!!!」


もう一度、"お父さん"の平手打ちがゆきの頬に当たる。


「ここまで育ててやった恩を、ちゃんと返してくれるよなァ…???」


たらり、と口から流れる血もそのままにゆきは、コクコクと頷く。


「…しばらくはお前ェ、ブチャラティの所に行って様子見てこい。俺からポルポに話つけとく。お前の存在は知られてねぇんだ。…今度こそ、うまくやるんだぞ…!!!!」


そう"お父さん"は吐き捨てるように告げ、部屋を出ていった。


部屋にはひとり、ゆきの荒い息遣いだけが残っていた。

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