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しずくが、落ちた。長い睫毛に光るそれは、うつくしくて、うつくしすぎて、胸が締め付けられた。


ぐったりと椅子に身体を預け、長い脚をぞんざいに投げ出し項垂れるリーマスは、世界に絶望しているように見えた。


「……苦しいんだ」
「うん」


苦しげに絞り出された声は、掠れていて聞こえにくかった。リーマスの顔はいよいよ悲壮感でいっぱいになっていて、私まで苦しくなった。


苦しい。それなのに、確かに私はよろこびにも似た感情を抱いていた。こんなにも疲弊した彼を知っているのは、この世界に私以外にはいないのだ。すべてを知っているのは、彼と、私だけ。


リーマスの手を取り指を絡ませると、力なく握り返された。手の甲に口づけを落とすと、湿っぽい唸り声とも、鳴き声とも思える音が聞こえた。


膝に頬を寄せて、手を繋ぎあわせたままリーマスの顔を見つめると、音もなくその頬にとろとろと大粒の涙がこぼれていた。


私だけのものだ。この涙は、私だけのものだ。どうしようもなくよろこびで胸がいっぱいになって、今にも声をあげて笑いだしてしまいそうになった。


「私が、いるわ」
「ずっと、いてくれるかい?」
「当たり前じゃない」


抱き締めると、リーマスは子供のように声をあげて泣いた。ああ、こんなにもあなたは、孤独なのね。かわいそうで、いとおしくて、すべて私だけのものにしてしまいたいと思った。


瞼に口づけると、塩辛い涙の味がした。この味を知っているのは、私だけなのだ。


(2012)

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