人も、物も、この世にあるものにはすべて、永遠なんてない。大切な人や、好きなものがなくなってしまった世界は、今までのそれとは違って、どこか少し、さみしい。不意にかなしくなって、瞼を閉じた。途端に世界は暗闇に包まれて、私がひとりで取り残されてしまったような気がした。 「急に黙って、どうしたの?」 瞼を開くと、リーマスがこちらを見ながら首を傾げていた。そうだ、私はリーマスと紅茶を飲んでいたのだ。いつの間にか自分の世界に入り込んでいて、すっかり忘れてしまっていた。熱くて飲めなかったはずの紅茶が、ちょうど良い飲み頃になっていた。つまりはそれほどの時間、私は自分の世界に入り込んでいたということだ。 「ごめん。自分の世界に入ってた」 「だろうと思った」 リーマスは柔らかく微笑むと、チョコレートを一口囓った。普通だったら顔をしかめられてもおかしくないことをしたというのに、リーマスは文句のひとつも言わない。自分の世界に一度入り込むと周りが見えなくなる私を、両親は叱り、かつての友人達は私の頭がおかしいと嘲笑った。それでもリーマスだけは、いつも私を待っていてくれた。 「なにを考えていたんだい?」 「永遠なんて、あり得ないんだなって考えてた」 リーマスの瞳が、私を見つめる。今、この時が永遠に続けば、どんなにいいだろうか。私たちに降り注ぐ太陽の光も、頬を撫でるやわらかな風も、小鳥の囀りも、ずっと、永遠に。叶わないことだとわかっているけれど、それでも、彼と一緒なら叶うような気がした。 「永遠なんてないけど、だけど、リーマスとずっと一緒にいられたらいいなって、思ったの」 人も、物も、この世にあるものにはすべて、永遠なんてない。大切な人や、好きなものがなくなってしまった世界は、今までのそれとは違って、どこか少し、さみしい。だけど、この人と一緒ならば、この人がいてくれるなら、このさみしい世界の中でも生きていける。 「うん。僕も、君とずっと一緒にいたい」 あなたはやさしいから、私の子供じみた言葉にも、頷いてくれる。永遠なんてあり得ない、すべてに限りがあるこの世界の中ででもあなたがいてくれるから、瞼を閉じても、もうひとりで取り残されたような気持ちにはならなかった。 (2013) |