愛の唄を奏でよう

「ロード消えたけど…この塔の上にある出口の扉はロードの能力よね…?」

「「『 あ゛ぁ゛ーーーーっ!!! 』」」




- -



『と、とりあえず上にいこ!上!』

「ラビッ!伸です伸!!」

「お、おおう!」

「つかこの有り様で扉があったとしても無事なんスか…?」

「…ラビのイノセンスってホント危険だわ……」

『これで出れなかったら、まじでラビのせ、』

「え、縁起でもねェこと言うなさ!!!オレが先上に行って無事か見てくる!イケたらすぐ引き上げっから!」



「伸ッ!」と言って天井へと上がっていったラビを見送ってすぐ、建物が大きく揺れた。その後、小さな揺れが断続的に続き、轟音が響く。



「地震が…」

「ここも崩壊が始まったんだ」



外を見ると城下はほぼ崩れていき、地の見えない闇の中へと沈んでいっていた。

と、その時。


?家族をみんな、置いていくつもり……??


『ッ!』


脳内に響いたあの子の声。不安そうな気持ちが読み取れる小さな震えた声だった。


?……なーんて、そんないじわるはもう言わないわ。私の一言があなたを振り回していることは分かっていたの。それに、私は貴女の味方。エクソシストでもノアでもない、貴女だけの味方でいることを決めたわ。ただ、一つだけ……、家族は大切に思って欲しいの。?


打って変わって、明るい話し方で彼女は言ってきた。それと同時に驚いた。彼女が……、こんなにも私のことを思っていてくれていたなんて。呆然と景色を眺めているように見えた私を心配したアレンは顔をのぞき込んできた。



「ルキア?大丈夫ですか?」

『……っ』

「…………ルキア」

『えっ、あぁ、うん、大丈夫』


咄嗟に反応できなくて曖昧に返事をすると、アレンは怪訝そうな顔をする。何か聴かれる、と思ったところにラビからのオッケーサインが飛んできた。建物が崩壊していることもあり、一刻を争うためすぐにアレンはチャオジーとリナリーを脇に抱えてラビのイノセンスに乗った。


「しっかり掴まっててくださいね。リナリーとチャオジーを置いたらまたすぐ降りてきますから、ルキアは待ってて」

「足元に気をつけてねルキア」

『ありがとう、リナリー。良い子で待ってるから早く降りてきてねアレン』

「分かってますよ」


困ったように笑うアレンは上にいるラビに上げるよう指示して、三人は扉のある天井へと上がっていった。揺れる建物の中、天井から降りてくる彼を待っていると、建物が崩れゆく轟音のなか、悲しそうな声が響く。振り返ると、レロが倒れてぴくりともしないティキに泣きついていた。


「伯爵タマ〜〜どうして出てきてくれないレロ〜」

『レロ……』

「ルキアたま……本当に、家族(ノア)のもとには帰らないレロか……?傷ついたティキが可哀想と思わないレロか〜〜?」


私の視線に気づいたレロは、泣いた顔のまま私に問いかけてきた。

可哀想―――。
私が愛している人を傷つけ、一度どん底に突き落とした相手のことを想えるほど、私は優しくない。本来なら憎しみを抱けるほどの相手。倒せて清々しているくらい。

でも、だけど、違う。

私の中のあの子が、ティキのことを、ノアのことを可哀想と思っている気持ちが溢れてくる。またそれとは別に、私は敵としてのティキだけじゃなくて、私を大事にしようとしてくれる人間味のあるティキの一面も知っている。


『そんなわけ、ない……』


一歩、また一歩とティキに近づいていく。体があの子の悲しみと支配されそうな恐怖で震えているのが分かった。


『悲しいよ……。どうしようもないくらい、悲しい……。あの子が泣いてるんだもの……。』


?傷つけて、ごめんなさい。あなたたち、ノアの側にいられなくてごめんなさい。でも、この子は悪くないの……。運命を呪うしか、できないの……。?


『ごめんなさい、って……。側にいられなくてごめんなさいって、言ってるの』

「ルキア、たま…?」

『?…………ティキ、私を許して。?』


倒れるティキの傍らに座り込み、冷たいティキの頬に指を伸ばす。陶器のように美しい白い肌の額には、もう聖痕はない。


『?解放されたのね……?』


これでもう、貴方とは敵対しなくて済む。
そっと触れていた肌から手を引き、立ち上がろうとしたその時。

一瞬、殺意のようなものを感じたと思った矢先のことだった。


『っ!?』


ぐわっと伸びてきた触手が私の喉元を乱暴に掴んできた。足が地から離れ掴みあげられた私はなんとかして振りほどこうと暴れるも、今までの戦いでかなり体力を消耗してきたため微々たる力ではそれはできなかった。

禍々しいオーラを放つ?それ?は、本当に彼なのか。


『ティ、キッ……!』

「……ユル、サ、ナイ……ッ」

『!?』


ゆらり、ゆらりと立ち上がった虚ろな瞳をする彼は、私の知るティキではなかった。背中から次々と出てくる触手は、一斉に天井へと向かい、何かを地へと引きずり下ろした。


『ア、レンッ……!!』

「ルキア……!?」


瓦礫の中かは出てきたのはアレンだった。私の状態を見て驚くも、その触手の先を見てさらに驚いた顔をした。


「そんな……ノアの力は……破壊したはずだ…っ」


なんとか絞り出したアレンの声は驚愕に満ちていた。


「……お前、誰だ。ティキ・ミックなのか…?」



-- end

久々更新です。やっとこさ、ここまできたぞ!
20160914




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