白跡


 跡部君は人間が嫌いだと言う。人一倍裕福な家庭で育ち恵まれた環境の中にいた反面、欲にまみれ破綻していく人々を横目に過ごす日々は精神に大きな負担があったようだ。そんな人間不信な彼が心を許すのは白石蔵ノ介、ただ一人だけだった。



「白石、白石」
 頼りなくか細い声で自分を呼ぶ跡部はまるで幼子のようだ、と白石は内心苦笑しながらも、そんな素振りはおくびにも出さずに、どないしたん?と優しく問いかけた。
「……怖いんだ」
 ゆっくりと時間をかけて紡がれた言葉はとても簡素だったが、白石の心にじわりと浸食していく。実感する。ああ、跡部くんには俺しか頼れる奴がおらへんのやって。
「何が?言うてみ?」
「見てくるんだ、周りが。俺に期待してるって顔で。だから俺はその期待に応えるようにしたい、けど、でも…」
「ああ、期待されるのに疲れてまうんやね?期待を裏切るようなことになったら怖くて堪らんのや」
 そう言うと、跡部くんはどうしようもなく、情けない顔でこくんと頷いた。あの、跡部くんが。自信家ともとれる言動をする彼は、蓋を開けてみれば単なる男子中学生なのだ。期待の度合いが違うのだけれど。
「安心しい、俺がついとるやん。跡部くんが頑張って、一生懸命努力してたんは、全部知ってんで?」
「し、らいし…」
 俺の手を、微かに掴むだけだったが、それだけで十分だった。跡部くんは俺に依存しとる。俺も跡部くんに依存しとる。こうやって跡部くんの周りにいた人を根こそぎ排除して、俺一人に頼ってくれるようにするくらい彼のことが好きだ。
 こんなこと、きっと気づいてないのだろう。本当は俺と居る方が不幸なのだ。彼の味方は俺のせいで消えてしまったのだから。だからといって彼を手放すなんて論外だ。
 ぎゅうと抱きしめ、胸のなかにいる人を思い浮かべた笑みは、狂気をはらんでいた。















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久々に途中までしか書いてなかった話の続きを書いたけど、そもそも何書こうとしてたか忘れたっていう






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