半分よこせ 三成 | ナノ 「それじゃ、始めようか。一番目は誰?」
「私だ。」
「げっ…三成かよ…。お前、怖い話なんかできんのか?」
「確かに…考えてみればそうだな。三成は、昔からこういった話に参加した覚えがない。」
「誰も出来ないとはいっていない。ただ、こういった話を面白半分にするのは、あまり好ましく思わないだけだ。」
「まぁーまぁまぁ!口喧嘩はそこまでにして。三成、話を始めてくれるかい?」

「…わかりました、それでは始めます。」





これは、私が小学生の頃実際に体験した話です。
皆さんご存じとは思いますが、私の家は両親と四つ年上の兄、あと妹がいます。
両親は共働きで、私達はいわゆる「鍵っ子」でした。


ある時、兄が学校行事…確か天体観測だったと思います。
学校に泊りがけで、星を観測する行事なんですが、そのせいで、兄が家には帰らない日があったんです。
当時まだ妹は生まれていなかったので、その日は母が帰ってくる夕方まで、私は家で一人でした。

夕方まで一人ということは、別に珍しいことではありませんでした。
兄も外に遊びに行けば、夕方まで帰ってこなかったりしましたからね。
なので、私は特に気にすることもなく、家に帰ると学校で借りた本を読んでいたんです。
冬だったので、居間に出ていた炬燵に入って。
でも、炬燵って暖かいせいか入っていると眠くなりませんか?
…そうです。私は眠るつもりはなかったのですが、疲れていたせいもあったのか、いつの間にか眠ってしまいました。



がちゃり、という玄関の鍵が開く音で目が覚めました。
あ、おかあさんが帰ってきた。
そう思った私は、体を起こして「おかえりなさい」って言おうとしました。
でも、言えませんでした。
声が出ないんです。
声だけじゃない。よく考えたら身動きすら取れない。
金縛りにあっていたんです。

その間も、玄関からぺたぺたとスリッパの音が近づいてくる。
家でスリッパを履くのは私と母だけだったので、母には違いない。
だけど何かが違う。



居間のドアが開く。
おかあさん?と思いましたが、私が寝ていた位置からは、ドアの方を見ることはできませんでした。
体は未だに動かない。
でも、音がしました。
スリッパを脱いだのか、絨毯をすり足で歩く音が。

ずりっ、ずりっ…ずりっ、ずりっ…。


「ミッチャン。」

私をこう呼ぶのは母だけです。声も母の声でした。

「ミッチャン。デカケルワヨ。」

でも、その言葉は全く抑揚がない。


ずりっ、ずりっ…。

声の主はさらに近づく。
もう少し、あと二、三歩でその正体が見える。



その時、
「ただいまー。」
もう一度玄関が開く音がして、母の声が聞こえました。
その瞬間、金縛りが解けました。



とにかく怖かった私は母親の元に駆け寄ってしがみ付きました。
私は、普段そういったことをする子どもではなかったので、どうしたの?って、母は不思議そうにしていました。
おかあさんだけど、おかあさんじゃない人がきた。
そう言うと、母の顔色は真っ青になりました。


後で聞いた話ですが、どうやら母は双子だったそうです。
詳しい内容は話して貰えませんでしたが、双子の姉は小さい頃に亡くなった、と。
さらに母によると、私は生まれてすぐに、原因不明の高熱をだして死ぬところだったそうです。
病院を何箇所も回っても原因が分からなくて、見放されたと。
どうしようもなくなった母がお寺に相談に行ったところ、こう言われたそうです。



あなたの片割れの姉が、その子を連れて行きたがっています  と。



お祓いをしてもらったら、何をしても下がらなかった熱が、嘘のようにすっ…と引いたそうです。
私が二人目の子どもだったから、私にも半分よこしなさいってことだったんでしょうね。





これで私の話は終わりです。
…それ以来変わったことはなかったかって?
そうですね、今のところはありません。
しかし、もう現れないと断言もできませんがね。



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半分よこせ
語り手:石田三成

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