プロローグ | ナノ 「なぁ、皆で怖い話しねぇ?」

正則のその一言が始まりだった。





「怖い話?」
急になんだ、と言うように清正が復唱する。
「そう!夏だし、夜だし、なんか天気悪いし!」
「最後の関係ある?まぁ、確かに蒸し暑いけど…。」
団扇を片手に桜井が返す。
気温はそれほどとはいえ、湿度が高いのだろう。片手は話す間も忙しなく動いている。
「まぁ、正則の言うこともわからなくないけどな。」
ちらりと窓に目を向ける一光。

昼過ぎから下り坂となった天気。
地面を叩きつける雨音は絶えず、時折雷鳴が響く。
吹き付ける風は強まる一方で、カタカタと雨戸を揺らし、静かな部屋で一人でいたら、少し不気味な雰囲気だろう。

「この天気じゃ祭りも中止じゃろうし、みんな暇じゃろ?」
「テレビでも見てれば?」
桜井がちらりとテレビの方に視線をやると、テレビのすぐ傍にいた安治と目が合った。
すると安治は、リモコンを片手に首を振る。
「さっきから映らん。」
電源を入れ、カチカチとリモコンを押すも、どのチャンネルも砂嵐と騒音が流れるだけである。
「―ということなんじゃよ。」
「あらら。」
「アンテナやられたのかもなぁ。」


「げっマジで?」


突然聞こえたドアの方に顔を向けると、長泰とアイスを頬張る嘉明。
長泰は、連ドラ見ようと思ってたのに…と落ち込んでいる。
そんな長泰をよそに、正則の目についたのは片手のアイスの箱。
「お、アイス!一本一本!」
「あー、うん。片桐兄さんと糟屋兄さんから。」
「後でお礼言わないとな。」
次々に伸ばされた手によって、あっという間にアイスは減っていた。

残りのアイスが一本。
取っていない人物がいる、と、長泰はきょろきょろと部屋を見回す。
「…三成は?」
すると、とん、と後ろから肩を叩かれた。
「私はここだ。」
「あ、三成。」
携帯を片手に部屋へ来たのは三成であった。

「吉継が、今日は帰れないかもしれない、と。」
てっきり全員いると思っていたのか、三成の目は目に入らなかった人物を探している。
桜井が且元さんと武則さんは台所だよ、と言えば、三成はそうか、と頷いた。
「落雷の影響で、電車が止まったらしい。動きそうになければ、マンガ喫茶にでも泊まると言っている。」
「吉継兄さん、今日車じゃなかったのか?」
「あー…そういえば、今日は祭りがあるから道が混むかもしれないし、都心は道が狭いからって言ってた気がする。」
「えー吉にぃなら怖い話いっぱい知ってそうなんじゃがなー。残念。」
「怖い話?」
長泰から差し出されたアイスを受け取った三成の問いに、一光が簡潔に説明をした。


「俺は他にすることもないし、乗ってもいいかなーって思ってるんだが。」
「まあ、そうですね。」
「うん。」
一光の言葉に、長泰や嘉明も頷く。
「三成も参加しなよ、人数多い方が楽しいし。」
「…あまり気乗りしないな。」
桜井の言葉に三成は渋い顔をするも、拒否まではしない。
じゃあ参加ね、と桜井は強引に進めた。

「あぁ、そうだ。且元と武則も呼んで来い。」
人数多い方がいいんだろ?と、安治は正則を見る。
うんうん、と頷く正則は、大人数の参加に満足そうである。
「じゃあ、俺が呼んできます。」
言うが早いか、一光は部屋を出た。



正則、清正、三成、嘉明、長泰、桜井、一光、安治、且元、武則の計十人。
結局、全員が参加することとなった。

「じゃ、順番決めってことで…はい。」
且元は畳んだ紙が入ったお菓子の袋を差し出した。
「この中に一から十まで数字が書いてあるから、それが話す順番ね。あ、開けるのは全員引いてからね。」
引く順番は年功序列となり、武則から順番にくじを引いていく。
紙を掴んですぐ取る者もいれば、吟味する者もいる。
最後に且元がくじを引き、皆に行き渡ったことを確認すると、一斉に紙を開き、番号を確認した。



「それじゃあ、始めようか。」



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怖い話を語りましょ。

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