リーンカネーション 行清 | ナノ おかしな夢を見た。
さして長い間眠りについた訳でもないのに、長い長い夢だった。


辺り一面が緑に囲まれ、茅葺き屋根の家々が立ち並ぶ。田舎の農村、だろうか。
薄汚い着物を身につけた子供の自分が、仲間を引き連れて村を、川を、山を駆け回る。

次に見たのは、少し立派な屋敷だった。同い年程の少年達や少し年上の人達と、屋敷の手伝いやちゃんばらのようなことをしている。
時に叱られ、時に誉められ、まるで家族の様だった。

そんな朗らかな日々が続いたかと思えば、今度は刀や槍を取り、人を殺していた。
俺一人で、ではない。沢山の人々が入り乱れていた。
馬は嘶き、銃声が轟き、金属がぶつかり合い、勇ましい声が響く。
殺したことに、罪悪感などない。ただ敬意を表し、救われることを祈った。

戦場を駆け、知謀を尽くし、政務・検知・整備を行い、時にゆるりとした平和な時間を過ごす。
出逢いもあれば、別れもある。
あっという間に時は過ぎていった。


最後に見たものは、高い天井。病か、寿命かはわからないが体が衰え、ほとんど動かすことはかなわなかった。
周りの者が、皆悲痛な面持ちで此方を見ている中、呟いた言葉。

『亡き太閣殿下の宝…秀頼様を、上様をくれぐれも頼む。』

譫言の様に頼む、と繰り返していたその言葉が脳裏に焼き付いて離れなかった。
夢は、そこで終わった。




そんな夢を見たせいか、妙な心地だった。夢というより、遠い記憶のように思えた。

(…そんな馬鹿な。)

ぼんやりとした頭の出した感覚を否定し、ゆっくりと体を起こした。
時計を見ると、日付が変わっている。8時頃に家に着いた所までは覚えているが、それ以降の記憶がない。
疲れてたのか?
ふと携帯を見ると、メールの受信があったことを知らせる淡い光が点滅していた。折り畳み式のそれを手に取り、ぱちりと開く。

【メール受信+】

5件以上の受信があったことを知らせるその表示に驚いた。
そんなに沢山のメールが来ていたのに、自分は起きなかったのか。送ってきた相手に、少し申し訳なく思いながらメールボックスを開こうとした。
その時、今まさに手元にある携帯が鳴り出した。

【小西行長 0X0-XXXX-XXXX】

小西から、電話?
通話ボタンを押し、電話に出た。
「こんな時間になんだ?」
『あ、清正!まだ誰にも言われてへん?』
少し慌てた様子の小西に、首を傾げる。
「? 何をだ?」
『…その反応、まだやな?』
まさに、ニヤリという表現が似合いそうな声。と、いうか絶対にしているだろう。
なんだコイツ、ムカつく。殴りたい。
俺がそんなことを思っている中、僕がいちばんとか、訳の分からんことを言ってる。

「早く要件を言え、切るぞ。」
『あっちょ!待てや!全く…短気はいかんて、いつもゆーとるやろが。』
どこか嬉しそうな声が抜けていない。なんなんだ?

小西の次の一言に、俺は目を見開いた。
そうか、だからさっきのメール…そう思うとなんだか照れ臭くて、思わず俺も笑みを溢した。



『誕生日おめでとさん!生まれてきてくれて、ホンマありがとうな!』



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リインカーネーション
2011 加藤清正誕生/追悼

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