友と 三成と吉継 | ナノ 「今夜は冷えるな。」

すっかり日の沈んだ夜、星々が美しく輝いている。
毛利輝元に代わり、西軍率いる石田三成は大谷吉継の元へと来ていた。
これからどう動くかという相談と、友人として彼の様子を伺う為である。
「星が綺麗に見えるのだろうな。」
「あぁ。」
陣屋には陣幕しか張られておらず、上を見上げれば満天の星空であった。
暖は二人の囲む机の回りの松明のみ。
三成は寒くないか、と声をかけると、大丈夫だと返された。

「朝は霧が出るかもしれぬ。三成、気をつけた方が良いぞ。」
吉継は真面目な声でそういうと、今度は何時もの調子で、まぁ、儂には霧など関係の無いことじゃがの、とカラカラと笑った。


吉継は視力というものをとっくに失っていた。
しかし、それでいてもここに至るまでにそれを感じさせない見事な采配を振るってきた。
そんな彼が自分に味方してくれた事はとても心強い。
しかしその反面、無理の出来ない体を押させていることに申し訳ない気持ちもあった。

(吉継の為にも、絶対に内府を倒さねばならない。)

秀吉が死んでからというもの、規約を破り好き勝手していた家康を思い出すと、様々な思いが胸の内に込み上げ、三成は唇を噛み締めた。


「三成。」
吉継の呼び掛けにはっと我に帰る。
呼び掛けに答え、顔を向けると、吉継は苦笑いを浮かべていた。
「余り難しく考えるな、三成。そんな調子では、見えないものどころか、見えるもんも見えんぞ?」
実質、お主が大将だろう、そんな調子でどうする。
と、まるで視力を失ったことが嘘であるかのように、三成の額を小突いた。
あぁ、そうだ。今は余計な事を思い出している場合ではなかった。
「すまない、吉継。」
「礼には及ばん。」
口許に笑みを浮かべた親友を見て、三成もまた笑みを浮かべた。

「勝つぞ、絶対に。」

自分自信にも誓っているかのように、その言葉は力強い思いが込められていた。
「内府を討ち果たした後は、お前にはゆっくり療治してもらおう。」
いつもの調子に戻った三成の言葉。
吉継は、ゆっくり休めるとは思えんがな、と、またカラカラと笑い声をたてた。



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友と 2010関ヶ原シリーズ
今思えば関ヶ原前夜は雨だったね。

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